第55話

俊杰チンチエ先輩、来ましたー!」

「あ、ツァイ、来ましたか」


 その子が来たのは、豚を食べ終えて炒飯チャーハンに移った時だった。


 見た目は15歳くらいの女の子。この子が俊杰の言ってた秘書ちゃん?


「おー、賢者様!私、先輩の通訳秘書やってる彩夏ツァイシァっス。

会えてまじ嬉しいっス、好きに呼んでください!」

「よろしくね」


 元気な子だなあ。着ているのは動きやすそうなチャイナドレスだし、大きなカバンを持ってるからもしかしたら学校帰りなのかも?


「僕は彩って呼んでます。彩はアルバイター秘書なんでこき使って大丈夫ですよ」

「アッ、先輩ひどくないですかー⁈」

「彩ちゃんは何でアルバイトしてるの?」

「あー、お金いるんスよ。実は高校から留学したくてー」


 まあバカなんですけどネー、と言った後に目をキラキラさせてこちらを見る。


「っていうか先輩、私お腹空いてるんでちょっと食べていいですか⁈」

「仕方ないですね」

「よっしゃ〜」


 パクパクと炒飯をたべる彩ちゃん。美味しそうに食べるなあ、と思うとちょっとほっこりした。


 デザートの月餅(美味しすぎてテイクアウトした)を食べ終えたところで俊杰が席を立つ。


「僕は仕事なのでもう行きます。彩、頼みますよ」

「はいはーい、給料アップ期待してるっス!それで賢者様、行くとこは私決めてもいいっスか?」

「うん。大丈夫だよ」


 途端に、彩ちゃんの目がキラーンと輝く。


「賢者様、絶対オシャレすればカッコいいと思うんスよ!ショッピングしに行きましょー!」


 そんなわけで、僕は彩ちゃんに全身コーディネートされることになった。


 その分のお金は全部経費で落とすために、彩ちゃんは切符に至るまで全て領収書を取っている。ちゃっかりしてるなあ。


中環セントラルにはめちゃめちゃ色んなショップがあるのでおすすめッス。彼女がいるなら洋服をお土産とかいいんじゃないスかね?」


 彼女かあ…セレナには一応行く前に挨拶しに行ったけど拗ねられたんだっけ。


「うん、そうするよ」

「…なんかめっちゃ甘い雰囲気出されたんスけどー!吐きそうッスー!」


 彼氏と別れたばかりの私にはキツイっス、と言われて僕もはははと苦笑いするしかない。


 そしてセントラルというのは、港の方にも増して人が多くて建物も高いところだった。


 道行くのも10代が多いけど、商人らしい人も多かった。


 そしてアパレルショップで心ゆくまで着せ替え人形にされ、なぜか髪の毛もセットさせられた。


 チャンパオと呼ばれる東洋の男性服に、ワックスで遊ばせた髪の毛。

 ピカピカに磨き上げられた靴と刈り上げられた髪のせいで耳はスースーする。


「この髪型、絶対似合ってないと思うんだけど」

「何言ってるんスか?めっちゃ女の子に見られてるじゃないスか。1人くらいお持ち帰りしたらどうスかね?」


 彩ちゃん…

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