東洋編

第51話

 夕飯を軽く済ませた後、ルシエルくんとイリヤちゃんは王宮に戻ることになった。


 ルシエルくんは早く銃の性能を試すため、イリヤちゃんはヴェロニカちゃんと最終便で帰るためだ。


 僕と俊杰チンチエで2人も寂しいし、1人呼ぼうということになり、暇そうな…んんっ、スケジュールが調整できそうなル・ルーを呼んで飲むことになった。


「乾杯!」


 ギルドの飲み屋にて、男3人の飲み会はハイテンションでスタートする。


「んーっ、このビール最高ですね!」

「はー、美味い…今日の依頼しんどかったんだよ」

「ル・ルーは今も冒険者なんだっけ?」

「そーそ。依頼とありゃ外国まで行くんだ」


 力こぶを作るル・ルーに俊杰が苦笑する。


「そんなこと言ったら僕もですよ。明後日には麗孝リキョウ帝国に戻って、商品の買い付けをしにいかないと…

 あと、レーナちゃんの転入試験のセッティングもしたいですし」

「麗孝帝国かー、僕外国行ったことないから憧れるなあ」


 麗孝帝国というのは東の大陸で一番大きい、東洋最大の先進国だ。

 面積が大きく、国民は驚くなかれ13億人。文化も料理も奥が深い。

 ちなみに僕の学院時代の歴史の卒論は、“麗孝帝国の貧富格差について”だった。


「じゃあ、行きます?」

「え?」

「僕も1週間くらいあっちにいたら今度は阿州に飛ぶので、先生も一緒に行きましょうよ」

「お、いいじゃねーか!あれ、でも俊杰は仕事あるんだろ。大丈夫なのか?」

「ええ、新入りの秘書がいるので。三ヶ国語喋れるとかで通訳をしてもらっているんです。案内させますよ」

「そんな急には無理じゃない?」


 僕の身支度は簡単に済むからいいとして、船の予約とか宿の予約とか、色々いるんじゃ…


「先生、何のために金があると思ってるんですか?」

「世の中にはコネと権力ってヤツがあるんだよなー、俊杰?」

「ル・ルーもこういってるんですから、行きましょうよ。船も宿もんですから」


 笑顔でそう言われて、僕は酔いも手伝って、こっくり頷いてしまったのだった。


「滞在許可証も僕が用意しておくので、先生はパスポートと洋服だけ持って、明後日の朝の便に合わせて港に来てくださいね」

「楽しんでなー、先生」




 …そしてその翌々日、僕は本当に麗孝帝国に旅立つことになる。

 権力ってコワイ。

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