第49話

「っていうかルシエルくんは何でここに?」

「あんな監禁生活、普通は耐えらんねえだろ。定期的に抜け出して拳銃買いに来てんだよ」


 とても王子とは思えない発言をするルシエルくん。たしかに平民の洋服を着ている。


「あ、あの、助けてくれてありがとうございました!イリヤといいます」


 ペコペコと頭を下げるイリヤちゃん。


「?なんか嗅いだことある香りだな」


 すんすんと鼻をならすルシエルくん。そうか、嗅覚で区別してるのか。


「イリヤちゃんは王族付きのメイドだからじゃない?」

「あー…確かに。っていうかアンタ、女ならちったー気をつけろよ。この通りは特に危ないジジイが多いんだから」


 分かってんのか?と首をかしげるルシエルくんに、ムッとしたようにイリヤちゃんが顔を上げる。


「助けてくださったのは感謝してますけど、街中で銃を撃つのは法律ではグレーゾーンですよ」

「正当防衛だから俺は潔白だっつーの。っていうかアンタも女なら自覚しろよ。危ねーんだよ」

「性別で好きなことを我慢しないといけないんですか?貴方こそ盲目なら静かにしておいた方がいいんじゃないですか?」

「だーっ、ストップストップ!」


 火花を散らし始めた2人に僕が割り込む。になる2人ではあるけどなにぶん相性が悪いみたいだ。


「イリヤちゃんは強いのはわかるけどもう少し落ち着きなよ。さっきだってルシエルくんがいないと困ったでしょ。

 …ルシエルくん、今回は人がいなかったから良かったけど、街中での発砲は法律ではグレーゾーンだから気をつけること」

「…わーったよ。次から気をつける」


 ガシガシと頭をかくルシエルくんに、イリヤちゃんは首を傾げている。


「ラルシュ様、この人と知り合いなんですか?」

「うん。ガルシア王国の第一王子のルシエルくんだよ」

「あー、道理で見覚えがあるはずですね!」

「ああ、プランツの兄ですか」


 ふむふむと頷く2人。


「驚かねえのか?」

「別に、僕は国籍も麗孝リキョウ国に移したので所詮他国の王子ですし…」

「ヴェロニカ様があんなんなので変な王族には慣れてます」


 ヴェロニカちゃんは、うん、まあ個性的だもんね…(遠い目)


 ルシエルくんはこんな態度を取られたのが初めてなのか、目をしばしばさせている。


「…ぶふっ、お前らスゲーな。アンタも俺のことルシエルって呼んでくれよ」

「あ、いいんですか?私はイリヤで結構ですよ。楽なので」


 うーん、ルシエルくんとイリヤちゃんが並ぶとやっぱり画になるなあ。


 俊杰チンチエも同じことを思ったようで、「2人ともお似合いですね!」と言うと2人揃って反撃された。


「「全然仲良くないから!」」


 …いや、仲良しじゃん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る