第47話

「もう、私にご遠慮なさらなくても構いませんわ。さ、リリーシカ様の写真をお譲りくださいませ?」

「いや渡せないから!何に使うか分かんないから!」


 思わず突っ込むと、ヴェロニカちゃんは目をしばしばさせた。


「貴方、面白い方ね。ヴェロニカと呼んでくださいませね」


 フフフと笑いながら頰に手を当てるヴェロニカちゃん。本当に(黙ってれば)美人だ。


「ねえ、イリヤ。私もうちょっとリリーシカ様と居たいわ。ダメ?」

「いや、私が嫌なんだが…」


 疲れた様子で呟くリリーシカ。後で労っておこう。


「ダメです!もう帰りますよ!」

「国に帰ったら武器庫に案内してあげるから、お願い!」

「…し、仕方ないですね」

「いいんだ⁈」


 っていうか武器庫?イリヤちゃんは何で武器庫がいいんだろ?


 首をかしげると、セレナに耳元で説明された。


「イリヤちゃんは極度の軍オタ、つまりミリタリーオタクでね。軍服や戦車、特に拳銃が大好きなのよ」

「…セルゲイ皇国って大丈夫なの?」


 思わず突っ込んだ僕は悪くないと思う。


「じゃあイリヤちゃんはどうするの?」

「うーん、ヴェロニカ様はリリーシカ様相手だといつまでも張り付いてますからね。

 セルゲイ皇国への最終便が18時なので、それまでは自由にさせてもらいます」


 …本当に大丈夫なのか、セルゲイ皇国。職務怠慢にならない?


「心配しなくても大丈夫ですよ、賢者様。サボりにならないようにちゃんとタイムカード押していくので。

 自由時間を職務に入れるほどがめつくありません」


 あ、そこらへんはしっかりしてるんだ。


「じゃあ私は王都の二番街に行ってきますね!」


 いそいそと腰を上げるイリヤちゃん。二番街は鍛冶屋が武器屋が並ぶ、イカついおじさんばかりの通りだ。

 冒険者や剣士がよく使うひとつ。


「僕はじゃあ三番街に行ってくる」


 新書チェックしたいんだよね。あと出来れば漢方についての本が一冊欲しいし。


「イリヤちゃん、気をつけてね。ラルシュも見張ってて」

「?うん」


 あ、二番街で変な男に絡まれないように見ててくれってことかな?

 たしかにいかにも儚げな美少女だもんね。ゴツいマッチョだらけの武器屋にイリヤちゃんが行くとなったら心配か。


 …まあもやし体型の僕ができることは何もないんだけど。


 …自分で言ったことに自爆した。筋トレとかしてみようかな…

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