第46話
セレナは夜に大事なパーティーがあるとかで戻ることになった。
「あーあ、また独身だなんだって色々言われるんだわ…」
「おつかれ、セレナ」
「ラルシュが結婚してくれれば全部丸く収まるんだけどなー」
「僕、平民なんだけど?」
「大賢者のネームバリューがあれば大丈夫よ」
「そういう問題?」
どうせヴェロニカ様はリリーシカのところにいるだろうという話になり、王城に戻ってきた。
「イリヤちゃんはどうするの?」
「ヴェロニカ様を力づくでもいいから戻させないと…私が減給させられますので」
あ、イリヤちゃんがしっかりした敬語になった。なるほど、プライベートと仕事は分けてるんだ。
王城に戻り、王立騎士団の本部に急ぐ。僕も教え子の顔を見てから宿屋に戻ることにして、セレナの後をついていく。
「リリーシカ、イリヤちゃん来たわよー」
「や…やっと来たか、イリヤちゃん…」
「リリーシカ様、いつもいつも申し訳ありません」
僕は軽く三度見はした。
綺麗に巻かれた波打つロングヘアーに、世界に3%しかいないといわれるヘーゼルの瞳。
サラファンと呼ばれるセルゲイ皇国の伝統的な衣装は誰が見ても上等だと分かる。
首に飾られているのは目の色とお揃いの、青と緑が混じったような不思議なジュエリー。
大胆なデザインの派手なピアスもよく似合う、絶世の美少女…なんだけど。
「先生…助けてくれ」
パシャパシャパシャと鳴り響くシャッター音。ハアハアという興奮した荒い息遣い。極め付けは…
「リリーシカ様ぁ…今日も素敵でしゅ…きゃわいいよぉ…!」
…これは、社会に放っていい人物なのかな?
絶世の美少女がよだれを垂らして、金貨100枚は余裕でするカメラを連写しているのには違和感しかない。
「えっと…あの子はリリーシカが恋愛的に好きなの?」
「いえ、遠くからそっと推しを見守るのが好きなんだそうです」
「どうみても見守ってないよね⁈むしろリリーシカの精神をすり減らしてるよね⁈」
パシャパシャとなり続けるシャッター音の中でもイリヤちゃんは平然としている。
「いつものことですので」
「いつもの事なの⁈」
「ヴェロニカ様の部屋はリリーシカ様の写真で埋まっています」
…世の中には、知らない方がよかったことがある。
「ヴェロニカ様、帰りますよー」
「もぅ、イリヤ。あとちょっとだけ居させてよ、ね?」
「ダメです」
美少女がイリヤちゃんに話しかけられて仕方なさそうにカメラをしまう。
優雅な仕草におっとりした口調はお姫様そのもので、同一人物だとはとても思えない。
「ヴェロニカ様、こちら大賢者のラルシュ様です」
「私はヴェロニカと申します、大賢者様。お会いできて光栄ですわ。ところで…リリーシカ様の幼少期の写真とかありまして?」
ハアハアと興奮しながら鼻血を出す美少女。どうしよう…この子、筋金入りの変態だ。
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