第44話
「あのアクセサリー素敵ね!あそこに寄りましょう」
「無理無理、買えないから!桁おかしいから!」
セレナに「浮気を疑わせてしまったお詫び」ということでデートをねだられたのでデート中です。
歩いているのは王都の五番街。アパレルショップやジュエリーショップが建ち並ぶ五番街には女性がやっぱり多い。
僕としては本屋や薬屋があって、医師や学者が多い三番街に行きたいんだけど…
「何よ、ラルシュは行きたいところないの?」
「三番街」
「絶対いや」
…即答された。
「セレナはまだ勉強嫌いなの?」
「大嫌いよ」
うえー、と舌を出すセレナ。黒髪カツラに眼鏡をしているからバレてないはずだけど、周りの男の人が数人振り返った。
…ちょっと妬いたので手を恋人繋ぎにして見せつけることにした。
と、その時。
「うわっ⁈」
「きゃっ!」
僕と誰かがぶつかった。目の前に銀色の何かが飛び込んでくる。
「痛ったぁ…」
ぶつかってきたのは、真っ白の陶器みたいな肌に紫色の瞳をした、とんでもない美人さんだった。
年齢は多分レイアと同じくらい。髪の毛は綺麗に編まれていて、着ているのは上等のメイド服だ。
姿から察するに、貴族のメイドさんってところかな?
真っ白な肌からすると、もしかしたら北欧人かもしれない。
「怪我してない?」
「ラルシュ、その子、膝すりむいてる」
「本当だ。ちょっと膝出してくれる?」
ポケットから絆創膏を取り出す。ルシエルくんと会った時に指を切って以来、持ち歩いてるのだ。
血が滲む膝に絆創膏を貼ってから安心させるように微笑む。
「ごめんね」
「い、いえ、私が悪いので…お2人があんまりラブラブだったので見惚れてて」
周りから見たらそんな感じなのかぁ。ちらりとセレナを見ると耳が赤い。
「あれ?もしかしてセレナ様じゃないですか?」
その女の子がセレナを見上げてキョトンとした顔で言う。
黒髪眼鏡でも分かるのか…セレナの知り合いかな?
「ええと、失礼だけど貴方は誰かしら?」
「あ、私はヴェロニカ様の専属侍女のイリヤと言います」
「…あぁ、あの時の子ね!美人さんになってから分からなかったわ。久し振りね!」
知り合い?と聞くと、ヴェロニカちゃんと会った時に一緒に挨拶されたの、と返ってくる。
ヴェロニカって、確かプランツの婚約者だよね。
「セレナ様、こちらはもしかして噂に聞く大賢者様ですか?」
「…噂って?」
「大賢者様と女神様はラブラブだってガルシア王宮の使用人さんから聞いてたので!」
笑顔で爆弾を落とされた。使用人さんんんん!
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