第43話
「何の用事?プランツ」
部屋に入るやいなや、不機嫌そうにセレナがそう言う。
セレナは今日の午後から公務があって、仕事だそうだ。
「みんなを呼んだのは他でも無い、先生のことについてだ」
「なら仕方ないわね」
「チョロくない⁈」
集まってきたレイア、
「単刀直入に言う。先生、王都で働く気はない?」
「無い」
僕は即答した。そりゃ、宮廷学者になりたい気持ちはあったけど、今は山奥でのんびり暮らしてる方が楽しいし。
「でも先生、王都にいたらセレナさんとずっと一緒にいられるんですよ?」
俊杰がきょとん、と首をかしげる。
「セレナは王族だから仕方ないって割り切るしかないよ」
「でも先生、これからどんどん歳をとってゆくでしょ。ずっと1人でいるつもり?」
レイアの問いにうぐ、と口を詰まらせる。
「先生は何かやりたいこととかねーの?」
「うーん…実は大学院に興味があったんだよね」
宮廷学者の道を閉ざし、僕が次に志したのは大学院だった。
大学、しかも医学部には金銭的に行けなかったけど、大学院はちょっと特殊だ。
年齢性別問わず、試験に受かれば通えるし、大学に比べて学費も安い。
5人を育てて、お金にも余裕ができたし大学院を受験しようかと思ったけど断念したのは、大学院の数自体が少ないからだった。
各大陸に大学はまあまああるものの、大学院はひとつずつしかない。
更に西の大陸の唯一の大学院には医学部がない。医学部のある大学院は北の大陸だけだ。
その事を5人に説明する。
「だから大学院に進学しようかと思ったけど辞めたんだ」
「あー、北欧の大学院は確かに…」
俊杰は頷くけど、セレナ含め他は何で進学が難しいのか分かっていないみたいだ。
「なんで無理なんだよ?」
「先生、確か北欧語で論文書いてたわよね?」
「あー、いや。シンプルに北欧の大学に外国人は通えないんだ」
「…え?」
どういうこと?という顔になった皆んなに、俊杰が説明し始めた。
「北の大陸の国は全て鎖国という政策をとっているんです。
北欧は外国人はよほど特別な人間じゃない限り、留学や移住を認めません。
北欧の学校は世界でもトップレベルの教育機関ですが、北の大陸に住む人間じゃないと通えないんです。
よって、北欧の学校に通うには国籍を動かさないといけないんですよ」
へー、と声があがる。
「っていうかプランツ、貴方の婚約者は北欧人でしょう。なんで知らないんです?」
「だって俺、婚約者に1ミリも興味ねーもん」
「さすがに国のことくらいは勉強したんでしょう?」
「全くしてねえ」
僕はにっこりと笑顔を浮かべて、プランツに正座をさせた。
「婚約者の国くらい勉強しなさい。世界地理の時にいつも寝てたからでしょ!
だいたい王族なんだから国際のことをもうちょっと勉強して…」
とりあえず説教した。
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