第41話
「まず、絵の場所がなんで分かったの?」
「匂いだ。絵に使われてるあの絵の具は独特な匂いがするからな」
全く分からない…
「魔王との戦いとかは参加しなかったの?」
「俺は仮にも王族だし、盲目だから誰も信用しなかったよ。俺はどんな場所にでも当てられる自信があるんだけどな…」
落ち込むルシエルくんにクスクス笑ってしまう。
「なんだよ?」
「何でもない。アップルパイ食べよ〜」
置いておいたナイフを使ってアップルパイを切り、ニコニコ喋って過ごした。
最初は僕のことを変わり者だと認定したらしく、会う度にまたか、と呆れていたけど、日が経つにつれて口角が上がっていく。
態度がだんだん軟化されていくのが嬉しくてしょうがなくて、僕はそれから数日間、1日に一回はルシエルくんの部屋を訪ねた。
門番の人には賢者で通っているらしく、賢者様と呼ばれるのだけがこそばゆいけどそれだけだ。
国民には僕の気持ちを汲んで写真は報道していないとのことで、囲まれることもなかったし。
そう、何も問題はなかった…はずなんだけれど。
「ラルシュ、浮気したでしょ!」
「あぶっ!」
…現在進行形で、問題が発生している。犯人はセレナだ。
「王城の中に恋人でもいたわけ⁈あーあ、ラルシュの“好きだよ、セレナ。世界で一番大愛してるよ”は嘘だったのね」
「何年前のことを覚えてるんだよ⁈」
セレナが王族ということで、隠れて彼氏彼女として付き合っていた学院時代に僕が言った言葉だ。
高等科に上がるといじめもなくなり、思いっきり恋愛に集中できるようになったから、その若気の至りというか何というか…
「真夜中に女子寮に侵入してくれたのも、お兄様に向かって“セレナを馬鹿にするな!”って叫んでくれたのも、ぜーんぶ嘘だったのね」
「もうやめて…」
若気の至りで放った言葉に、ガンガンHPを削られる僕。
っていうか、王族なセレナが門の前で待ち構えてまでその事を言いに来たんだろうか…
そう思うとクス、と吹き出してしまう。ここがプランツだったら拳骨を落としているところだけれど、ココは恋人と教え子の差かな。
可愛い、としか思わない。
「な、何笑ってるのよ?」
「ううん。セレナは僕が大好きだなあと思って。浮気なんてしてないよ」
「ゴホンゴホン!」
甘い雰囲気になりかけたところで咳払いが響いた。
振り返ると、門番の方々が顔を赤くして頬をかいている。
「セレナ殿下、賢者様、お部屋でお願いします」
「…すいませんでした」
セレナは真っ赤になって頭をショートした。
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