第39話
結論から言うと、僕とセレナには何もなかったらしい。
酔っ払って水を洋服にこぼし、そのまま寝てしまった僕をプランツとセレナが連れ帰ったそうだ。
どうせなら面白いのでセレナの隣で寝させておけと言う話に姉弟の間でなり、そして今に至る。
「ホッとしたような、残念なような…」
「あら、今から本当にする?」
「勘弁してよ、僕気持ち悪い…」
朝の6時過ぎ。僕とセレナはそんな会話をしながら食堂へ向かう。
朝ごはんをなんでも世話してくれるそうだ。ルシエルくんと会った深夜はまだ酔いが抜けきっていなかったけど、数時間経って二日酔いが襲ってきた。
頭がガンガンして、すごく気持ち悪い。歩くのも億劫で、ぜひ朝ごはんは世話になることにした。
「おはよう、先生とババア」
「はっ倒すわよ」
爽やかな笑顔で挨拶してきたのはプランツ。食堂にプランツと僕とセレナの3人しかいなかったので周りを見渡す。
給仕が3人、部屋の隅に控えている。テーブルにはご飯が並んでいて、それだけだ。
「家族と食べないの?」
「父上と母上はもう公務だよ」
「私は所詮、妹だし、プランツは王太子だから比較的ゆるいの」
「即位したら更に仕事地獄かあ〜」
うげえ、と顔をしかめるプランツ。
「…お兄さんは?」
「冗談だろ?飯が不味くなる」
「流石にプランツが可哀想だわ」
黙々と食事を口に運ぶセレナ。気になって聞いてみる。
「プランツはなんでそんなにお兄さんの事が嫌いなのさ?」
「ああ、嫌いだね。母さんの事をずっと馬鹿にしてくるんだ。娼婦生まれの卑しいガキを弟だなんて、俺は認めない、だとさ」
「プランツも結構、兄に虐められて苦労したのよ。これ以上聞かないであげてラルシュ」
「そーゆーこと」
ってことは、ルシエルくんは1人で食事を毎日食べてるんだろうか。
10歳の時からずっと…
モヤモヤしたまま食事を終える。セレナと王都を変装して歩いていても、頭の片隅にルシエルくんのことがあった。
「ごめんセレナ、午後からやりたい事があるんだ」
「…あっそう。どこにでも行けば?」
昼食を王都のレストランで食べ終えた後、セレナにそう切り出すと明らかに拗ねた顔をされる。
でもやっぱり、ルシエルくんの事を放っておけないよ。
王城へ着くと、記憶を頼りにルシエルくんの部屋を探す。
途中の廊下で会ったベテランらしいメイドさんに場所を聞くことにした。
「大賢者様がルシエル殿下に、いったい何の用で?」
「あ、いや、その…」
「…でも嬉しゅうございますわ。ルシエル殿下は実直ですが天邪鬼な方で、親しい方もいらっしゃらないから…」
ほう、と息をついた後メイドさんは、ルシエルくんの事を歩きながら語り出した。
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