第36話
そして、王宮での式は問題なく、本当にあっけなく終わった。
王族や上位貴族だけが出席するセレモニーだし、流石にプランツもセレナもおしとやかに座っていた。
無難なスピーチや、王族からの口上、昼食が終わるとお開きになる。
僕は緊張でほとんど味がしなかったけど、幸か不幸か大賢者の二つ名のおかげで、特に不快なこともなかったし。
グレイが僕に嫌味を言おうとしたけど、
兎にも角にも問題なく式は終わり、夕食は楽しくラフなパーティにすることになった。
「カンパーイ!」
「成人おめでとう〜」
ここは冒険者ギルドに併設された酒屋。
高くも安くもない、ツマミが美味いと有名なごく普通の大衆居酒屋だ。
メンバーは僕と教え子5人と、セレナもなぜかいる。
セレナは5人とは普通に顔なじみらしく、楽しそうにワインを煽っていた。
ちなみにプランツとセレナは黒髪のかつらをかぶって伊達眼鏡をかけている。
周りには普通の冒険者のおじさんもいるし、楽しく一般人として過ごしてもらいたいからだ。
「白子ポン酢となめろうをひとつ追加で!」
「あと担々麺とイカユッケ、一人前ずつ」
おつまみを追加しながら近況話に花を咲かせる。周りに聞かれていいのか聞いたら、そんな野暮な人間は排除済だと、詳しく聞いてはいけない答えが返ってきた。
俊杰とリリーシカはほとんど顔出ししてないし、プランツとセレナも変装しているので、レイアだけやたら目立っている。
周囲から男の視線も感じる。俊杰も黙っていたら美少年だし。
けどそこは流石ル・ルーで、顔馴染みらしい周りにはキッチリ事前に牽制済みだそうだ。
「それにしたってセレナさんと先生が恋仲だったなんて驚きましたよ〜」
笑顔でビールを一気飲みする俊杰に、うんうんと頷くレイア。
「まあでもお似合いよね。そう思わない?プランツ」
チビチビとカクテルを飲んでいたプランツが顔を向ける。
「別に」
「プランツはこう言ってるけど認めているからな」
ウイスキーを真顔で、ストレートで飲みながらきっちりフォローするリリーシカ。
「もう結婚すればいんじゃね?」
3杯目のジョッキを空にして、顔を赤くしたル・ルーが僕をつつく。
「う〜ん、少なくとも学院生の時はそのつもりだったんだけどな〜」
へへへー、と笑う僕は完全に酔っている。頭がふわふわして、今にもパーンってしそうだ。
「ヒュー、先生さっすがー!」
「なら何で別れたとか言ってたわけ⁈」
胸ぐらを掴むセレナ。
「ん〜、ふふふ〜」
あ、イカユッケ美味しい。
「ダメダメ、もう先生酔っ払っちゃってますよ」
商人たるもの、酒は嗜む程度だという俊杰が水を渡してくる。
グラスに入っていた水をチビチビ飲んでいたところから、僕の意識がパーンと弾けた。
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