第26話
「レーナちゃんもコーヒー飲む?」
落ち込んだ雰囲気が漂い始めたのでコーヒーのおかわりをプランツにも促す。
「私、苦いの苦手です」
「僕もなんだよ。だからいつもコーヒーはこうするんだ」
プランツにコーヒーをポットから注いでから、僕とレーナちゃんの二つのカップにコーヒーを注ぐ。
それから蜂蜜の入った瓶からスプーンでひとさじとって、コーヒーに垂らした。
蜂蜜の上品な甘い香りがふわり、と漂う。
「召し上がれ」
「…!甘い、美味しいです!」
「でしょ、僕も苦いの苦手なんだ。大人なのに恥ずかしいよね」
へへへと照れ笑いを浮かべると、プランツが真顔になった。
「先生って本当…尊いよな」
「褒められてるのかな?」
その瞬間。プルルルル、と音が鳴り響いた。
「何、この音?」
「“電話”っていう魔道具だよ。遠くからでも話ができるんだ」
ポケットから四角い小さな箱みたいなものを取り出したプランツが耳にあてる。
「もしもし?…リリーシカかよ……あ、そうだっけ、悪い悪い。でも今日は無理だって。…理由?俺、今先生のところにいるからさ」
どうやら電話の相手はリリーシカらしい。それからしばらく何かを喋った後、こちらを向く。
「リリーシカが来たいって言ってる。ログウェル山は遠いから無理だろって言ったら、今日の夜行列車で来るって…有給もぎ取ったんだと。どうする?」
「僕は全然大歓迎だよ。でも住所が分からないなら僕が迎えに行くかなあ」
「いや、俺の位置情報をリリーシカは魔法で知れるから大丈夫だよ。それより今日泊まっていい?」
「いいけど…」
プランツは王族だし、外泊なんて許可がおりるんだろうか?
そう聞くと、グッとプランツが親指を立てる。
「大丈夫、俺、よく外泊してるから。王宮側も慣れてるんだよな」
「ダメじゃん!」
夜遊びからの朝帰りを繰り返す王太子…僕の教育が悪かったんだろうか…
キリキリと痛む胃を抑えつつ、レーナちゃんはコーヒーを飲み終えて便箋を受け取ると帰って行き、僕らもホッと一息つく。
思い出話なんかをしているうちに瞬く間に時間は過ぎていった。
夕食後、寝るところはどうするかという話になる。
「僕の部屋に布団敷いて寝る?」
「でもこれからリリーシカ来んじゃん」
「あー、そうか。なら僕とプランツでベッドに寝ようか。大きいからなんとか2人はいると思う」
布団にリリーシカは寝てもらおう。年頃の女の子だから書斎の方がいいかなあ…
そんなことを話しているうちにリリーシカが到着したらしく、ドアがノックされた。
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