第25話

 プランツが僕大好きすぎて怖い。

 そんなことを思いながら銀杏の炊き込みご飯を食べ終え、食後のコーヒーを飲んでいると、「せんせー!」と大きな声がした。


「レーナちゃん?」


 縁側の方に顔を出すと、手を大きく振っているレーナちゃんがいた。


「あ、俊杰チンチエが言ってた新しい教え子ちゃんか。俺はプランツ=フォン・ガルシア。よろしくな」

「ガルシア…?王様なんです?」

「そうそう」


 レーナちゃんにはいまいちピンときていないらしい。

 そうか、レーナちゃんからしたら本でしか知らない存在なんだもんな。


「それより、なんで今日来たの?たしか今日は来れないって…」

「俊杰さんにお礼を言いたくてきたですよ!帰り際に俊杰さんからもらった漢方を病気のお母さんに飲ませたら、起きれるくらいに回復したです!」


 目をキラキラさせるレーナちゃんにほっこりしていると、隣のプランツが声を上げる。


「俊杰から漢方を貰ったって、すげーな!アイツがオーナーの商会、値段が高くてVIP専用の、国民の憧れの商会なんだぜ?

 その商品の漢方を貰ったって…」

「へー、俊杰の商会はすごいんだね。流石だなぁ」

「…先生、変わってねえなあ〜。いやでもなんか安心したわ。王宮はドロドロしてっからさ」

「そうなの?」

「それにしたって先生は童顔だよなあ。俺たち育ててた時から変わってねえし。25でもイケるんじゃね?」

「あ、分かるです!私も最初見た時、先生は学生だと思ったですよ」


 童顔って言われると複雑だなあ…。僕ってそんなに若いんだろうか。


「先生、便箋くださいです。俊杰さんにお礼の手紙書くです」

「え、レーナちゃんって俊杰の住所知ってんの⁈」


 プランツが驚いたように声を上げる。


「僕も知ってるよ?」

「マジかよ、俺とル・ルーなんか、まだ俊杰の住所どころか住んでる国さえ聞き出せてないのに…!」


 これが信頼の差か、と落ち込むプランツをまあまあと励ます。


「まあアイツは秘密主義だからな。先生とレーナちゃんみたいな息抜きできる場所が必要なんだろ」

「秘密主義?俊杰が?」

「だって大商会のオーナーでほんの17歳だぜ。いつライバル商会に毒盛られて死ぬかも分かんねえんだろ」


 淡々とそう言ってコーヒーに口をつけるプランツに、レーナちゃんが寂しそうに眉を寄せた。


「…俊杰さん、私は好きです。死んじゃったら悲しいです。お兄ちゃんにちょっと似てるです」

「お兄ちゃん?」

「あ、言ってなかったですか?私にはお兄ちゃんいるですよ。

 ただ、エルフですけど魔法が使えなくて魔物に襲われたらひとたまりもないから、いつも家にいてお母さんのお世話してるですけど」


 初耳だ。レーナちゃんのお兄ちゃんか、きっとカッコいいんだろうなあ。

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