第24話

「え?お金?」

「見ろよ、このコインに彫られた顔」


 プランツが取り出したのは2つのコイン。金貨に彫られた横顔はプランツ、銀貨の方は…


「レイア!」

「知らなかったのかよ…俊杰から聞いてねえの?レイア、“聖女”って呼ばれてものすごい国民人気なんだぜ?」

「うん。すごいね、顔がお金になるなんて。レイアもプランツもよくできました!」


 小さい頃の癖でつい頭をポンポンしてしまった。


「あ、ごめん」

「懐かしいなあ。俺の原動力は先生とアイツらと暮らした7年間だもんなあ」


 嬉しそうに目を細めた後、ふと真顔になったプランツが姿勢を正した。


「先生にしか言わねえんだけど…俺の母親は下街の娼婦なんだ」

「え?プランツは確か正妻の王后陛下と国王陛下の次男だって…」

「それは表向き。“母上”は兄貴を産んだのと引き換えに、二度と子供を産めねえ身体になってたんだよ。

 それで“父上”が下町の娼婦を1人買って産ませて、“母上”との息子ってことにしたんだ。それが俺」


 自嘲気味に笑うプランツに何も言えなくなる。なぜか僕の視界が滲んだ。


「赤ん坊の頃に誘拐されたのも、“母上”の差金なんだ。母さんと父上の子である俺を、母上は嫌ってたからな。

 殺されずに田舎に捨てられただけマシだよ。まあだけど、他の人間は俺を本当の“王子様”だと信じ込んでて、それで7年の捜索の末にやっと俺が見つかったってわけ」


 僕の目からボロボロと涙が溢れる。なぜプランツが泣かなくて僕が泣いているのか、不思議な光景だけど。


「泣くなよ、先生…俺はもう気にしてないから」

「だって…」


 ワンワン泣き始めた僕にスージーがサッとハンカチを取り出す。


「プランツ、辛かったんだろうなあと思ったら…グスッ」

「マスターはおじさんなので仕方がありません。食事の用意ができたので呼びに参りました」


 クールな顔で僕の心を突き刺したスージーは素知らぬ顔でダイニングへプランツを案内する。


「今日は銀杏ぎんなんの炊き込みご飯です」

「銀杏かあ…」

「先生って銀杏苦手だっけ?」

「いや、トラウマっていうか…学術学院の時に嫌がらせされたことがあって。筆箱に潰れた銀杏がギッシリ詰まってて、臭くなるっていう嫌がらせなんだけど」


 ピシリ。空気が固まった気配がした。プランツから殺気が溢れ出ている。


「プランツ…?」

「然るべき方法で排除するから名前教えて」

「教えるかっ!」


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※これは本編とは関係ありません

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