第23話
「プランツ、ずいぶん久しぶりじゃない」
「先生ーーー!」
ひし、とドアを開けるやいなや抱きついてきたプランツの背中をポンポンと叩く。
「あの小さかったプランツと目線が一緒とはなあ」
「へへへ…」
2週間ばかり経って、紅葉も散って肌寒くなり、冬も深まった今日この頃。
王太子になったプランツが来る予定だったのだけど、まさかの今日だった。
「俺、175まで伸びたんだ。でもル・ルーは180超えてるんだよな、あいつ…」
「2人と会ったんだね。ル・ルーに殴られたんだって?」
ダイニングにプランツを座らせて、サイフォンでコーヒーを丁寧に淹れる。
スージーはキッチンで食事の下ごしらえ中だ。
「ル・ルーがSランク級冒険者になったって言うから、王家が表彰することになったんだけどよ。
俺がSランクの証の紋章入りの勲章渡そうとしたらグーで殴られて」
うわー…
王太子になんか貰うって、相当すごいんだろうけど…ブレないなル・ルーは。
「俺の護衛がル・ルーを射殺するとか言い出したから幼馴染だっつったら大騒ぎになって」
「そりゃそうだろうね」
「んで、今は普通にル・ルーは顔パス。週一でル・ルーとリリーシカは王城に来て俺と喋ったり喧嘩してるぜ」
リリーシカは多分、十中八九ル・ルーに巻き込まれてるだけだろうけど。
「リリーシカは王立騎士団なんだっけ?」
「そ。今は俺の護衛」
「…ん?リリーシカがル・ルーを射殺するとか言い出したの?」
プランツ曰く、グーで殴ったル・ルーをリリーシカがグーで殴ったらしい。
「本気で王族を殴るとか、幼馴染として恥ずかしい。私が射殺する」
銃を構えるリリーシカを慌ててプランツが止める、というおかしな構図になり。
王宮内は信じられないものを見たと終始沈黙に満ちていたらしい。
ル・ルー…
「ごめんね、プランツ。僕の教育が行き届かなくて」
「気にしてねえって。どーせアイツは変わんねえと思ってたし」
コーヒーに砂糖を大量に入れて、スプーンで混ぜながらそう話すプランツ。
「僕が代わりにゲンコツしたらよかったね。ル・ルーともリリーシカとも長らく会ってないなあ」
「会いに来れば?王宮に」
「無理無理。僕はただの平民だもん」
「平民、ねえ…」
しばらく何かを考えていたプランツがニヤリ、とイタズラを思いついた子供のように笑う。
「俺にいい考えがあるから、心配しないでよ。成人式には来てくれるんだろ?」
「行くつもりだけど、皆んななんかすごくなってるんでしょ?
スージーから聞いた。僕はよくわかんないけどさ」
「先生は分かんなくていいんだよ。先生には害なす奴は俺らがぶっ殺すんだから」
「こら!殺すとか言わない!」
口の悪いプランツをメッ、と叱るとなぜか嬉しそうにプランツが笑う。
僕がコーヒーポットを傾けていると、何やらプランツがゴソゴソとポケットを探り始めた。
「先生にあげようと思って持ってきたんだ。ほらこれ」
「?」
プランツが何かを取り出した。
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