第21話

「先生、そういう方がもしや…?」

「いないいない!いる訳ないでしょ、僕モテないもん」


 僕が笑顔で顔の前で手を振ると、俊杰チンチエとレーナちゃんが顔を合わせてヒソヒソやり始めた。


「俊杰さん、先生モテてたですよね?」

「もちろん。でも教え子全員で先生の優しさにつけ込もうとするメス豚たちを排除してたから、先生は知らないんだよ」

「あー、なるほどです」


 あの…?

 ヒソヒソやられて悲しい。これが反抗期かなあ…


「2人とも、何話してるの?」

「ん?必要なことです!」


 笑顔でそう言い切られるとそれ以上聞けない。俊杰とレーナちゃんが仲良くなるのは喜ばしいんだけどね。


 キノコを肴にワインを飲んでいると、時間の感覚を忘れやすくなる。


 近況報告やレーナちゃんの学校の話をしているうちに、外は夕方になっていた。


「じゃあ、僕はこれくらいで」

「もう暗くなるしね。またね、俊杰」


 俊杰と酒を飲む日が来るとはなあ…飲酒は16歳からだから、当たり前なんだけどさ。


「レーナちゃん、後日迎えに来るからね」

「ハイです!」


 レーナちゃんの入学試験のために、東の大陸へ渡るのも手続きも全部俊杰がしてくれることになった。


 試験前に俊杰がレーナちゃんを迎えに来るらしい。


「あ、あと先生。プランツが会いに行きたいって聞かないので、住所を教えておきました。今度遊びに来ると思います」


 それじゃあまたー、と俊杰が出て行ってからたっぷり2秒。


「お、王太子が遊びに来る…?」


 スージーが信じられないようなものを見る目で呟いた。


「類は友を呼ぶというか、マスター、私タダでさえ九尾が来て胃がだいぶやられてるんですけど、くわえて王太子が来るとか何事ですか?」

「お疲れ様」


 胃が痛むとお腹を押さえ始めたスージーを労うと、なぜかため息を吐かれた。


「特例中の異常なんですよ?元来、王族というものは一生に一度、遠目で見れればいい方なんですから」

「うーん、そう言われてもなあ…プランツは幼い頃は僕が育てた訳だしさ。“王子”よりも“プランツ”って感じが強いっていうか」

「それはそうでしょうが…」


 胃薬を飲むために水を口に含むスージー。


「それに学院生の時の彼女はセレナ様だったし」

「ぶふぅ!」


 スージーが噴き出した。水が入ったのか、ゴホゴホとむせる。


「セレナ様って、もしかして現国王陛下の妹君で、王太子殿下の叔母君にあたるセレナ=フォン・ガルシア様ですか?」

「そうそう。すごいでしょ〜、へへへ。僕、最初王族って知らなくて、気がついたら付き合ってたというか」


 口から水を垂らしながらスージーが固まった。

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