第20話
「知ってるの?」
「知ってるも何も、新進気鋭の超名門私立ですよ!
全寮制で、創立されてわずか5年ながら、数々の著名人を出しているんです!」
へえ、
そう褒めるとありがとうございます、と照れる俊杰。
「僕が理事長の特権でレーナちゃんを特待生として入れましょうか?」
「ダメだよ」
僕は選民意識や特権階級という言葉が何より嫌いなのだ。
「ちゃんと試験を受けさせて、そのうえで判断しないと」
「…先生は変わりませんね。冗談ですよ」
なぜか嬉しそうに笑う俊杰にホッと息をつく。
「じゃあレーナちゃんには俊杰から話をしてね」
「はい。あと、4人から伝言です」
「伝言?」
なんだろう。
「18歳の成人式は、先生にだけは祝ってもらいたいんだそうです。山に籠るのはいいけれど、成人式の時だけは来てくださいね?」
「うん、分かった。そうかあ、住所を4人とも知らないんだもんね」
了解、と頷いた。
世間話をしているうちにお昼時になり、レーナちゃんとミーちゃんを起こす。
麗孝学園の話を俊杰から聞いたレーナちゃんは目をキラキラさせた。
「試験受けたいです!いいですか?」
「もちろん」
まだ少し顔が赤いし熱もあるけれど、朝よりだいぶ下がったというレーナちゃん。
たしかに元気になったみたいで、お腹も空いたらしい。
「スージー、今日は休んでいいよ。僕が作るから」
スージーを台所から追い出すと、僕は久しぶりに腕を振るうべく割烹着を着る。
久しぶりに教え子もきたし、やっぱり自分で作りたいし。
朝は秋刀魚だったし、秋が旬のものといえば…
「キノコだよね!」
棚から食材を取り出す。すごくいっぱいあるけど、スージーはいつもどこから調達してるんだろ…
気を取り直して料理に励む。昼からお酒を飲むなんて贅沢だけど、今日だけ許してほしい。
とっておきのワインを取り出してくる。ワインにもキノコは合うんだよね。
「できたよ、どうぞ〜」
僕が持っている皿を見て、おー、と歓声が上がる。
ワイングラスに注がれた白ワインの美味しさを引き立てるおつまみはキノコのバターソテー。
熱が下がったとはいえ病み上がりのレーナちゃんには
他の大人たちにはサツマイモとキノコのガーリックペンネだ。
「先生って本当、料理うまいですよね」
「ふふん、どうぞ食べて食べて」
「料理もできて頭も良くて、性格は温厚、稼ぎもまあまあ、なのになぜマスターは結婚できないのでしょう…」
難しいことをして考え込んだスージーに、バキッと音が聞こえた。
…バキッ?
「あぁごめんなさい、つい力が入っちゃって」
俊杰が持っていたフォークを折っていた。
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