第19話
「ご飯ができました」
スージーが
スルーされたレーナちゃんが一瞬ショックな顔になった瞬間。
僕がふふ、と笑いながらスープのお皿を持って現れた。
「あっ、卵粥!」
そう、僕が作ったのは卵粥だ。普通のお粥に卵と蜂蜜を加えて完成する。
優しい味わいと子供にも食べやすい素朴な甘さで、5人と暮らしていた頃は人気ナンバーワンの朝ごはんだった。
作れるのは僕だけなので、子供たちが風邪をひいた日にしか食べられないスペシャルメニュー。
特に俊杰は卵粥が大好きで、食べたいがために仮病を使ったこともある。
「はい、レーナちゃん」
ふー、と冷ましてからスプーンをレーナちゃんの口元まで持っていく。
ぱくり、と恐る恐る食べたレーナちゃんの顔がパアッと輝いた。
「おいひい…!」
「そうでしょ!僕たちの大好物だったんですよ」
なぜか自慢げに頷く俊杰に、ハッとしたように目を向けるレーナちゃん。
「貴方、誰ですか?」
「僕は俊杰。先生の生徒だから、うーん、兄弟子みたいなものですよ。そちらこそ」
「私はレーナ…です」
「レーナちゃんですね。よろしくお願いします」
俊杰と聞いて誰かわかったらしい。そうか。僕、話してはいたけど顔は見せたことないもんね。
たまご粥を食べ終わったレーナちゃんは眠いらしく、瞼が重い。
「いいよ、寝て。おやすみなさい」
「…ん〜」
寝息を立て始めたレーナちゃんに寄り添うように、ミーちゃんも丸くなる。
「ミー、レーナちゃんのこと気に入ったみたいです」
「そうだね。どうする俊杰?モーニングティーでもする?」
「いいですね。近況報告といきましょうか」
リビングのソファーで寝てしまった1人と一匹を起こさないように、テラスのテーブルに腰掛ける。
「どう?レイアやル・ルーとは会ってる?」
「ちょくちょく5人で集まってますよ」
「それはよかった…って5人⁈」
ってことは王族のプランツも?
「プランツ、すごくイケメンになってましたよ。ル・ルーが会った瞬間にプランツをぶん殴って、逮捕されかけるって事件もありました」
ル・ルー…
「俊杰はどこを拠点に活動してるの?」
「東洋の方にも支店はありますが、本拠地はガルシア王国で」
「どうして?」
「西洋に居ないと、先生に近づくクソ野郎に社会的制裁を加えられないじゃないですか」
…なんて言ったの?
背後に黒いオーラをまとわせながら、何やら早口で言い捨てた俊杰。
「いえ、何でもありませんよ。先生こそどうですか?新しい教え子ちゃんが居たじゃないですか」
「レーナちゃん?すごくいい子で、見込みがあるよ。ちょうど東洋に留学に行きたいと言われたばかりで」
「へえ、いいじゃないですか」
「でもお金がないみたいだから、奨学金があって留学生を受け入れる学校が1番なんだけど…」
悩ましいなあ、とため息をつくと俊杰がキョトンとする。
「僕が買い取った学校に入れればよくないですか?」
「…学校を、買い取った?」
はい、と頷く俊杰。よく分かんないけど、学校買い取るってすごいんじゃないの?
「東の大陸の
「麗孝学園⁈」
黄色い悲鳴をあげたのはスージーだった。
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