第18話

「レーナちゃん⁈」


 慌てて僕が言うとミーちゃんがそっとレーナちゃんを降ろす。


「先生、ミーが言うには森の中で倒れてた女の子を拾ってきただけみたいです」

「そっか…ありがとう、ミーちゃん」


 どういたしまして、と言うように胸を張るミーちゃん。


「こらミー、僕の先生ですよ」


 俊杰チンチエがそう言うとシュン、とするミーちゃん。ンンン、可愛い!


「きゅ、九尾が人間にゴロゴロ言ってる…?夢?これは夢ですか…?」


 固まっていたスージーが目をこすりながら二度見する。

 あー、九尾って何かすごいんだっけ。僕民俗学は妖怪しか見なかったから神獣は分からないんだよなぁ。


「レーナちゃんに何か飲ませないと。怪我?」

「んー…熱があるみたいですね」


 僕の代わりに俊杰がおでこに手を当てる。


「OK、じゃあ治療しよう。スージー、あれ持ってきて。この間の」

「はい」


 スージーが持ってきたものを見て俊杰があれ、と声を上げる。


「それ…漢方ですか?」

「うん。西洋医学は風邪や病気より、外傷に特化してるでしょ。

 でも東洋医学は逆に、風邪や病気に特化してるからね」


 僕が持っているのは漢方だ。そう、このログウェル山は薬草がよく取れる。

 少し危険だけどここを選んだのはそれが理由なのだ。


 煮詰めた濃い漢方はすごく苦いけど、すごく効く。


 水を口に含ませて、漢方を口に入れると瞼がぴく、とわずかに動いた。

 喉がごくり、と動いた瞬間に「苦すぎです⁈」と飛び起きるレーナちゃん。


「おはよう、レーナちゃん」

「先生…」


 気まずそうにレーナちゃんの眉が歪む。と、まだ熱があるらしいレーナちゃんがふらついた。


 そして、ぐ〜、とお腹の音がなった。


「…」

「…」

「…ご飯、食べる?」


 恥ずかしそうにする俊杰にクスクスと笑いながら、もう怒っていないことを示すためにレーナちゃんに微笑む。


「おいで。一緒に食べようか。お粥でいい?」

「…はい」


 とりあえず出来るまでの間はレーナちゃんを座らせる。


 隣に丸まったミーちゃんのフワフワの毛並みにレーナちゃんはウトウトしていた。

 ミーちゃんは小さい女の子に懐かれるのは嫌ではないらしく、ペロペロと額を舐めている。


 スージーが隣で朝食を作っているのを横目に、僕は台所であるものを作り始めた。


「マスター、何を?」

「ちょっとね」


 久しぶりに作るそれを見て、仕方ないですね、と言いつつスージーはため息を吐いた。

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