第14話

「…妖精フェアリー?」

「エルフは元々精霊族なので妖精の親戚にあたりますね」


 スージーの冷静なツッコミを背中に受けながら、僕はレーナちゃんの可愛さに悶えていた。


 亜麻色の髪をふわふわに靡かせ、癒し系の笑顔を浮かべていたレイアは勿論天使だった。


 けど、ダークグリーンのストレートヘアを搔きあげて、悪戯っぽく微笑むレーナちゃんにはレイアにもない魅力がある。


 ちょっと悪戯っぽいのとエルフらしさが加わって、滅多に人前に姿を現さないから僕も見たことはないけれど、おとぎ話の中の妖精を思わせる。


 それからレーナちゃんには気に入ったレイアの服を選んでもらった。

 どれもこれも全部似合うので僕(の涙腺)の方がヤバかった。


 なんだろう…歳をとって涙腺が弱くなった気がする。


 こう、ボロボロで僕にも遠慮がちだったレーナちゃんが目をキラキラさせながらファッションショーしてるって…


 なんか…


「マスターが子犬系のイケメンなのに結婚できないのは、おそらくその教え子バカっぷりと父親力がカンストしているからだと思われます」


 スージーの冷静な観察に僕のハートは砕けそうだ…


「せ、先生!大丈夫です、先生ならきっと素敵な人が現れますよ!」


 レーナちゃんの必死なフォローが逆に心に突き刺さる。


 気を取り直して、授業を始めることにした。


「さて、基本的な…っていうか、学術学院卒業レベルにレーナちゃんはなったので」

「…え?」

「僕だって信じられないけど、恐ろしい勢いで吸収していくんだもん。

 現役学者としてのプライドも結婚願望も粉々になったよ…」

「マスター…お疲れ様です」

「ありがとう」

「ちょっと、2人ともひどいです!なんで私をそんな目で見るですか?」


 いつのまにか遠い目になっていたらしい。危ない危ない。


「なので、今度は東洋の学問を教えていこうと思います」

「東洋の学問?」

「うん。レーナちゃんは僕の専攻が何か知ってる?」

「医学ですよね?」


 そう、僕は医学者である。

 学術学院では最高難易度を誇る医学を専攻していた。


 医者の方なら分かると思うんだけど、医学部に入っても最初は医学と関係ない学問を習う。


 数学から始まり、薬学、物理、化学、東洋語、経済、法律などなど。

 僕が教え子たちに学問をオールマイティに教えられたのはそういう背景があるのだ。


「僕、決めたんだよね。結婚できないならせめて教え子たちを天才に育てようと…」


 そう、僕は腹をくくったのだ。

 天才を育てるのはあの5人のおかげで慣れている。


 せっかくの逸材なら、とことん天才に育ててやろうと…!


 エルフなら魔法は問題ないだろう。僕が教えられるのは学問しかないのだ!


「マスター、そんなことを言っているから女のおの字もないのでは?」


 再び僕のハートが砕けた。

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