第13話

 そんなこんなでレーナちゃんに勉強を教え始めたのだけど…


「え、こんなにやってきたの?」

「当たり前です!」


 僕が指定した量の倍宿題をこなしてきたり。


「…ここもう教えたっけ?」

「暇だったので読んでたら覚えたです!」


“暇だから”という理由でマスターしてたり。


「…ん?何でそんなペラペラなの?」

「聞いてたら勝手に覚えたです!」


 東洋語が教えなくてもペラペラになってたり。


 このレーナちゃん、とんでもないハイスペックエルフっ子だったのだ。


 東洋語は俊杰チンチエの母国語。僕らが普段使っている西の大陸の公用語は西洋語だ。

 だけど、やっぱり母国語は覚えたほうがいいし、俊杰にだけは特別に東洋語の授業もしていた。


 元々商人になりたいって言ってた俊杰には語学力も必要だと思ってたしね。


 そういう訳で僕もマスターしていた東洋語を冗談半分でレーナちゃんに教えたらあっという間にマスターし、およそ1ヶ月でバイリンガルが完成したのだった。


 代数や幾何、西洋史、地理、国語、東洋語、生物、物理に化学、地学、とどんどん学者レベルになっていくレーナちゃん。


 しかもキョトンとした顔でスマートに吸収していく。


 …僕、いつか抜かされるんじゃないだろうか…


 そんな危惧を覚えたので、僕は益々論文に励んだ。

 論文は教科書に書いてあることじゃなく、新しいことを発表していくモノ。


 僕はもう発見してあることより新しいものを見るほうが好きだ。

 だから、論文タイプの学者になったけど、僕の同級生の中には教授になった奴も多い。


 レーナちゃんは幸か不幸か、新しいものよりもう発見されてるものを掘り下げるのが好きなようだった。


 レーナちゃんに教え始めておよそ半年。ログウェル山の紅葉も赤く色づいてきた。


「先生ー!」

「おはよう、レーナちゃん」


 いつものようにノースリーブでボロボロの、麻のワンピースで来たレーナちゃん。

 最近どんどん肌寒くなっていて、僕も最近俊杰から貰った着流しの上に半纏はんてんを着始めたところだ。


「あ、ちょっと待ってね、レーナちゃん」

「?」


 レーナちゃんが寒そうなので、実は前々から探していたものがある。

 リリーシカとレイアのお下がりだけど、女の子の洋服だ。


 この間たまたま屋根裏へ行ったら、洋服が大量に入った箱を発見したのだ。


「どうぞ」

「うわあ…!」


 リリーシカはともかく、レイアのファッションセンスはとても良かった。


 鎧や騎士服、動きやすい実用的なリリーシカの服より、レイアの服がレーナちゃんのお気に召したらしい。


 レイアのお気に入りだった白いふわふわのワンピースを手に取って、「着てもいい?」と聞くレーナちゃん。


 もちろん、と頷くとレーナちゃんはトコトコと奥へ着替えるために引っ込んでいった。

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