山中編
第11話
「おはようございます、マスター」
「おはよう、スージー。今日の朝ごはんは?」
「昨日の残りのかぼちゃの煮物と雑穀米の雑炊、けんちん汁、それから
この家の家事を一手に引き受けてくれている
1年だ。36歳になった僕は、ログウェル山に小さな家を構えて住んでいた。
家は雨風に強いように石造り。バルコニーからは絶景が見渡せる。
間取りは書斎と寝室、リビングダイニングキッチン、バスルームの2LDK。
魔道具であるスージーがどこからか食材を調達して食事はできるし、掃除も完璧。
僕は本を読み、論文を書き、たまに景色を写生して、昼寝して、とのんびり暮らしている。
1年前まであまりに賑やかだった分、ホッとするのと同時にたまに寂しくなる。
魔物が多いと聞いていたログウェル山だけど、なぜか僕の家の周りは何も起きないし魔物も来ない。
魔物で思い出したけど、そういえばル・ルーが1週間いなくなったことがあったっけ。
「先生に危害を加える可能性があるヤツの生態系を滅してきた」とか言ってたけど、どういう意味だったんだろう?
そんなことを思いながら食事を終える。スージーが勝手に食器を持っていった。
「いいよ、スージー。たまには僕が…」
「いいえ、マスターを働かせてはならないと俊杰様から言われておりますので」
俊杰…
そう、このスージーは俊杰からのプレゼントなのだ。
魔道具の人形はすごく高いのに、1番上等で戦闘力も強いスージーをポンとプレゼントしてくれた。
…俊杰に無理させちゃったかなあ、と少し気にした。
その時だ。トントン、という物音が届いた。家のドアがノックされてる、と気づく。
「…マスター、お下がりください。外から何者かの気配がします」
「誰だろ?この小屋を知ってるのは俊杰だけのはずだけど…」
「俊杰様の気配ではありません。これは…マスター、エルフでございます。」
エルフ?とんがった耳で魔力の強い、森の中に住んでる、あの?
そう聞くとええ、とスージーが頷く。
「特に害意は感じませんが、万が一のことを考えて、私が出ます」
「いいよ、害意がないんでしょ。僕が出る」
「ですが…」
何やかんや言っているスージーを置いて、重厚なドアを開ける。
僕の家の庭にはぐるりと柵が付いていて、僕の趣味で色とりどりの花が植えられている。
ドアの向こうに立っていたエルフの女の子は、何故か近くの花に手をかざしていた。
「何か御用?」
「エッ、あ、あの…」
見たところは10歳くらいかな。エルフ特有の緑の髪に緑の瞳をしている。
プチパニック状態でアワアワしている女の子に、昔のレイアを見ているようでつい笑ってしまう。
「まあ、中に入りなよ。何かあるなら紅茶でも飲みながら聞くから」
「じゃあ、失礼するです…」
前を歩くその女の子が着ている服があまりにボロボロで、僕はつい眉をひそめながら後を歩いた。
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