第7話
他の3人が成長したのもあるし、俊杰が自分から世界に挑戦しようとしている背景もある。
むしろ応援の雰囲気が強く、みんなに見守られながら王さんと俊杰はグリンジの里を去った。
1番頭が回り、兄貴気質だった2人が去って、リリーシカには何かが芽生えたらしい。
今まで剣にしか興味を示さなかった凛々しい教え子は、周りへの気配りや学問にも精を出すようになった。
元々、入学できる12歳になったら王都にある王立武術学院に入りたいと言っていたリリーシカ。
兄貴分の2人がいなくなり、自分には剣だけだと気づいたリリーシカはみるみる成長していった。
11の誕生日を迎える頃にはル・ルーとレイアもいい影響を受けたようで、教え子の成長を喜ぶ僕と寂しがる僕がいる。
誕生日といっても、5人を拾ったその日を1歳の誕生日にしたので、本当の誕生日じゃないんだけどね。
あと半年、7月になったらリリーシカは武術学院の入試を受け、合格したら9月には武術学院に入学する。
同じ王立学院である学術学院に行っていたから分かるけど、校則がとても厳しいので、連絡もあまり取れなくなるんだろう。
手紙をたまにくれる俊杰はまだしも、プランツとリリーシカはもはや消息不明といってもいい状態になるのだ。
「先生、あの…」
少し寂しそうにしていた僕を気遣ったようにレイアが切り出す。
「私も、決めたことがあって。15歳になったら教会にシスターとして入ろうと思います」
「そうか。…頑張って、レイア」
「もちろん」
おっとりしていて、いつもリリーシカかプランツの背中に隠れていたレイア。
そんなレイアが決めたことだ。かなり本気で、何回も悩んで決めたことなんだろう。
僕がとやかく言うことでもない。
「先生、俺もなんだ。15になったら王都へ上京して、冒険者ギルドに入ろうと思ってる」
「ル・ルー…大丈夫か?」
「なんで俺だけ心配されんだよ!」
突っ込んだル・ルーにレイアとリリーシカが笑い声をあげる。
二つの空席に感慨深いものを覚えながら、僕たちは夜遅くまで将来について語り合った。
「そういえば先生は、どうして学者になったの?」
「魔法にも剣にも適性がなかったからかな」
「じゃあ適性があったら冒険者になった?」
ル・ルーが頬杖をつきながら聞いてきたので、クスクスと笑いながら答える。
「きっと、ならなかったよ」
「どうして?」
「僕は学問が好きだったんだ。知らないことを知るのが好きでしょうがなかった」
「…私は絶対嫌」
勉強が苦手なリリーシカが吐く真似をしたので、僕は吹き出した後に真面目な顔になった。
「だから、3人とも、この仕事が嫌だと思ったら遠慮なく帰ってきなさい。僕は君たちの先生なんだから。
いくらでも愚痴に付き合うし、僕はなによりも教え子たちを大切に思っているんだから」
「先生…」
「いつまでも先生は私たちの先生よ!」
レイアとリリーシカが感動しているのと反対に、ル・ルーが耳をほじりながらいいかます。
「だから結婚できないんじゃね?」
僕の繊細なハートが粉々に砕けました。
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