第4話
「こちらに、
「…プランツの事ですか?」
俺が背筋を伸ばして見つめ返す。目的はどうやらプランツらしい。
なぜ近衛師団が?他の4人も同じことを思ったようで、警戒する表情になる。
「その“プランツ”殿は、王位継承権をもつ我がガルシア王国の第2王子である」
「…は?」
リリーシカが包丁を持って構える。詐欺だと判断したらしい。
「プランツはグリンジの里のふもとで拾った捨て子でした。王子だとはとても思えませんが」
「疑問はごもっともです。しかし、プランツ殿は現国王陛下の紛れも無いご子息なのです。
6ヶ月の頃、乳母が下町を訪れた時に誘拐され、その後ずっと行方知れずになっていたのですが、金髪碧眼に腕に火傷という特徴があるのです」
たしかにプランツの腕には火傷があったけど…それを知っている教え子たちも黙ってしまう。
「そのプランツ殿を呼んでいただけますか」
驚くでもなく、プランツは目を伏せて黙り込み、「…嘘だ」と小さく呟いた。
「嘘ではありません。プランツ殿、こちらに手を」
プランツが黙って手を出すと、近衛師団の一人が水晶を持ってきた。
「王家の血が触れると紫色に変化するのです。さあ、プランツ殿」
「やだ、…やめろ!離せよ!」
慌ててジタバタと対抗するプランツの手が触れた途端、水晶が濃い紫に変化した。
「決まりですね。ではプランツ殿、…いえ王子殿下。我々と城へ向かいましょう」
「嫌だ!」
「やめろ!プランツを離せよ!」
「プランツ、プランツ!」
4人が慌ててプランツを取り返そうと手を伸ばすが、近衛師団がすげなくプランツを拘束してしまう。
「先生!プランツが攫われちゃうよ!」
「せんせ、たすけて…」
涙目でこちらに手を伸ばすプランツに手を差し伸べてやりたくなる。
でも、子供は親と一緒に育つのが一番いいのだ。僕は所詮他人なのだから。
でも、…7年だ。7年一緒に育った少年を手放す気にはなれない。
愛情と理性が葛藤する。絶対に王宮で上等な教育を受けた方がいいという理性と、愛しい教え子を離していいのかという感情。
「…」
「せんせい…?」
プランツが潤んだ目でこちらを見ている。近衛師団も僕を見ている。
僕は黙って立ち尽くしていた。
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