第79話 約束の戦い
「さあ、会場も盛り上がって参りました!!」
司会のその声に、会場がより一層大きな歓声を上げる。
「今日も激しい戦いが目白押し! 是非楽しんでいって下さい! 学生の皆さんは、是非魔術関係者へ全力のアピールを!! それでは、第1試合、行ってみましょう!!」
係の人の誘導に従い、まずはミサキがフィールドへと進んでいく。
「先に行ってるね」
「おう」
「本日最初の戦いはウルラ所属同士の戦い!! 誰がこの2人が勝ち上がってくると予想出来たでしょうか!? 私も正直驚きを隠せません!! それでも、この子の力は折り紙付き!! あのリューク・エルバドを圧倒し、その圧倒的の防御力で傷一つ負わず勝ち上がってきた"鉄壁"の少女――ミサキ・ニカイドウ!!!」
ウオー! っという悲鳴にも近い歓声が一斉に上がる。
今日の観客の入りは昨日よりもかなり多いらしい。
やはり、2日目の方がメインと思ってきている人が多いようだ。
昨日の戦いでファンになった人や注目した人達が、大きな声でミサキを応援する。
「今日も頼むぞー!! 無傷で勝ってくれ!」
「かわいいーー! 応援してるからね!!」
「リュークに勝ったのがまぐれじゃないと見せてくれ!!」
ミサキは気恥ずかしそうに辺りを見渡す。
少し唖然としたような表情をした後、申し訳なさそうに歓声に手を上げて答える。
今まで自分を抑えて生きてきたミサキにとってこんな歓迎される戦いは初めてなのだろう。
そういうところは俺と似ているかもしれない。
それに、これから始まる戦いが、生易しいものではないということも理解しているのだろう。
今日、ミサキは俺の手により完膚なきまでにその守りを破壊され、殻を破り、変化せざるを得なくなるのだから。
言わば自分の信念を破壊されるかもしれない日‥‥‥。
笑ってなんかいられねえよな。
「続きまして、こちらもまた、あの優勝候補ユンフェ・タオを破ってきたダークホース!! その勝ち方には余りの不自然さに違和感を覚えた人も多いでしょうが、果たしてその実力は今回も発揮できるのか!? "ダークホース"ギルフォード・エウラ!!」
なんだよダークホースって‥‥‥鉄壁みたいなカッコいい名前なかったのかよ!
まあ俺の破壊の魔術を理解できたのなんてユンフェと数少ない観客くらいだし、そんなものか。
観客からの歓声は応援と言うよりもざわつきに近い。
あんま期待されてねえなあ。
だが相変わらず1名の声が大きく聞こえる。
「ギル~~!! が、が、頑張って!! 貴方の力を見せてやってよ!!」
ゆ、ユンフェ‥‥‥それ周りの批判買う奴だから!
ユンフェの周りがざわついているのが見える。
だが、それに呼応するように別の声も聞こえてくる。
「ギル!! せっかく応援に来たんだからこんなところで負けないでよ~!!」
ユフィ‥‥‥!
横のクロも腕を組みやれやれと言った様子でほほ笑む。
「な‥‥‥ギル! 私が応援してあげるんだから、しっかりやりなさい! あとミサキもがんばれ!」
ドロシー‥‥‥それにレンやベルも。
まったく、恥ずかしくねえのかあいつらは。
――でも、応援されるのも悪くねえよな。急にやる気が湧いてくるぜ。
俺はミサキに向き直る。
「ミサキ‥‥‥もう俺たちに言葉はいらねえよな」
「そうね‥‥‥。前回戦ったときは分からなかったけど、ギル君の昨日の試合をみて確信したわ。私をこの先へ連れて行ってくれるとしたら、あなたしかいないって」
「信頼されてるねえ。‥‥‥任せておけよ」
俺とミサキはぎゅっと硬く握手をする。
ここからは、敵同士だ。
「俺がミサキの殻を破って、その鈍り切った心をまた動かしてやるよ」
「期待してるね」
「さあ、それでは両者、準備はいいですか!?」
俺たちは頷く。
「それでは準々決勝、第1試合――――はじめ!!!」
カーン!! っと試合開始の鐘がなる。
俺は開始と同時に勢いよく走りだす。
ミサキはそれを迎え撃つように両手を開き、指で四角を作るように構える。
「"エアーロック"、スクウェ――」
「遅えよ‥‥‥!」
俺は形成されつつあるバリアに即座に触れる。
バリアはガラスが砕け散るように細かな粒子となり、パリンと音を立てて砕け散る。
慌てて後退するミサキは引きながら汎用魔術を使う。
「‥‥‥! "ファイアボール"!」
「"アイスロック"!」
空中で完全に凍結した氷の塊にそっと触れる。
「"ブレイク"――」
瞬間、氷の塊は複数の氷片へと砕け、音を立て地面に降り注ぐ。
その光景に観客も息を飲む。
ユンフェの時は理解できなかった事象が、今は恐らく理解できているのだろう。
開始早々速い試合展開だ。
ついてこれるか、ミサキ。
「本当‥‥‥ギル君のそれ卑怯だよ‥‥‥!」
ミサキの頬が引きつる。
「これでお前をそこから引き釣り出してやるよ」
「やれるものなら‥‥‥!!」
ミサキは掌底を左右の手で上下逆さまに合わせると、そこを軸に回転させ、祈るように手を合わせる。
足もとに現れた魔法陣の大きさはかなり広大で、ミサキを中心にどんどん広がる。
「"エアーロック"――アイギス‥‥‥!」
ミサキを取り囲むように、360度に及ぶ無数のバリアの層が現れる。
その層一つ一つが超濃密度のバリアで、初めて肉眼でバリアの存在がはっきりと見える。
その形はまるで何か女性の様にも見え、不気味なオーラを放っている。
だがしかし――所詮は自分を守るためだけの孤独な城だ。
「この防御を突破出来た人なんていないよ、ギル君‥‥‥!!」
俺はパキパキと指をならす。
「――俺を止められるものはねえ!」
「ッ!!」
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