ユリ・ハードネス
低迷アクション
第1話
「“あの、告白は嬉しいけど、諸般の事情で、その気持ちには答えられません。
ごめんなさい。”って言ったら、
そこからの記憶真っ白になって、気が付いたら、どっかのホテルのベッドで
目覚めたんだけど、これって、もしかして…」
「ヤラレタな…下腹部に何か喪失的な感じはあるか?」
「(…スカートを確認するモソモソ音)あぁぁぁーっパンツ、
ホテルに置いてきちゃったぁ~っ!」
「えっ?パンツって?ホテルから、学校直行なの?“しーさん”っ!?
てか、忘れんなよ!パンツ!!そしてモヒカン!もっと優しいコメなっ!
これ大事な事なっ!!」
朝一番の邂逅となるホームルーム前に、クラスメイトの
はわわ系女子(おっちょこちょい?)‟天捻詩音(てんねん しおん)“
が、学級一の馬鹿で有名な“ラストモヒカン(勿論、アダ名、頭がモヒカンだから、
そうなった)”とミリタリーチックな服装で、自由度高すぎな“軍曹(ぐんそう)”に
声をかけてきた。明らか年齢に偽りありの二人。それが、確実現役女子校生の詩音と
普段から絡みはない。だが、荒事専門のキャラとして解決を求められているのかも
しれない。フルフル小刻み震えの彼女に声をかける。
「まぁ、昨今じゃ、深夜アニメで普通にラブシーンが流れる時代、いきなり告白、拒否されたら、クロロホルムでホテルGOー!!のシチュはアリえるといっちゃぁ、あるか…
で、相手の顔は覚えてんのか?」
そう言葉を返す軍曹の肩を、モヒカンがツンツンした(要は指で突っつく)
が、今は詩音の返答が先だ。
「うんっ…思い出しそうなんだけど、駄目だ。頭がズキズキする。軽い目眩も…」
「そうか、やはり、薬物を使われたな。とりあえず、学校近くの
コンビニで下着を…」
「軍曹…!」
「どうした?モヒカン、とりあえず今は彼女に今出来る最善の策をだな。」
「いや…、だから…あれっ!」
「だから何をだ?おいっ?‥‥あっ‥‥えーっと詩音さん?もしかして、その
穿き忘れたパンツは白?」
「えっ、何でわかるの?」
「ウチの“委員長”が頭に被ってる。」
三人の顔がほぼ同時に固まった…
「とりあえず、状況を整理する…」
「いや、軍曹、それより…」
「えっ?ワアアアーッ」
「キャアアアアーッ」
気が付けば、頭に詩音のパンツ被った委員長が詩音に急接近、てか覆いかぶさって、彼女の
耳とかハムハムしながら、合体しようとしている。
「おいいいーっ!真昼間から合意不一致な合体(要は濡れ場)繰り広げてんじゃねょー
(突っ込みと共に軍曹が委員長の頭を勢いよくはたく。」
「いったぁー、何するんですか?えっ、てか何で動きが止まってない?」
「そんな“驚愕っ!?”みたいな顔で見られても、こっちが困んわ!なぁ、モヒカン!」
「あっ、○○さん、もしかして、能力系?」
「あ、バレました?えへへ~」
「ええーっ、何、事情通かましてんの?知らないの、俺だけ?週刊、私の知らない世界なのー??」
「軍曹さん、私も知らないです。」
「あ、良かった~、ほっと安心な感じのステーションだわ~」
と急展開すぎる事態についていけない、軍曹と詩音、そして、事情通と当事者の4人のみが
“動いている”空間で、話は嫌が応なしに進んでいく。
「そもそも、私の術式の発動条件は、昨日の真夜中から、私が詩音さんと会話をする時の間で詩音さんと接触があったモノ、二人は今、会話をしていたから、発動要件は適用。もっとも、この時間は5分だけだけどね。大丈夫!5分あれば、色々出来る!という事で手から
ビィィィーム!」
「ギャアァァァ、何か痺れるぅ~!」
魔法使い、変身ヒロイン?それとも異能系、特にジャンル等説明なく、放たれた委員長の
怪光線にビリビリ明滅する二人の野郎をまたぎ、再び詩音に迫る委員長。勿論、彼女もただ黙って、死(?)を待つ訳ではない。踵を返して、逃げようとするも、今度は彼女の体が痺れたように動けない。
「フッフ、メインディッシュは逃がしません~。昨日は“余計な邪魔”が入りましたが、
今日は前も後ろも口もオーケー!ディープオーケー?(喋りながら、既に詩音の上着の下に手を入れている)」
「イヤァァァァッ」
「その悲鳴、ヒギィィッに変えてやります。ホーミータイ!ホーミータイ?(自分でも意味をよくわかってない)」
そんな悲鳴女子と狂声女子の二人の絡み合い、正直見ていたいが、今は状況打破に努めねば…軍曹は痺れる体を何とか動かし、改造制服(主に迷彩)の内ポケットから“自慢の切り札”を出そうとして…
轟音と共に半分半壊した教室の瓦礫に一気に埋もれる(モヒカンは「えっ?これって
アスベスト!?ヤバい!」と叫んでいた)
もうもうと煙が立ち込め、時間を取り戻した生徒達が悲鳴を上げながら、逃げ惑う中、
その中をこっちに向けて掻けてくる一人の少女という更なる急展開に、軍曹は切り札を静かに仕舞った…
「大丈夫か?しーちゃん!もう、私が来たから、安心だぜ!」
「あ、きーちゃん。ありが…うううっ?うん!あ、ありがとう…」
“きーちゃん”と呼ばれた元気っ子むき出し(だって、腕に穴あきグローブ嵌めてんよ!?)
の感じの少女は軍曹達を飛び越し(モヒカンが若干、踏まれた)
「おのれ!出刃ガメメス野郎が!」
と吠える委員長に拳を叩き込み、素早く詩音を抱き上げた。
本来なら、友のタイミング良しの救いにお礼オンリーの筈だが、ぎこちない理由は
抱きしめながら、彼女が詩音の胸を激しくまさぐっているからだ。
彼女も不味いと思っているのか、やんわりと抱擁から逃れようとするが、細見な外見とは裏腹にたくましい二本の腕にガッチリ掴まれ、身動きがとれないでいる。
「あ、あのきーちゃん、もう十分ですから。そろそろ、離して…」
「………………どうした?しーちゃん?んんっ?息してないっ!?」
「いや、してるよ。きーちゃん。してるから!」
「こうなりゃ、人口呼吸だ(完全無視)まずは胸、そしてマウストゥーマウスゥゥ!」
「ワヒャアアアンッ」
「オイイイィッ!さっきからガチすぎんだろっ!?てか、きぃぃちゃぁん!」
詩音の頭を潰さんばかりに掴み、その唇に自身のモノを近づけていくきーちゃんに
軍曹が突っ込み、モヒカンが頭をはたく。
一蹴拘束を逃れた詩音が軍曹の胸に飛び込んでくる。柔らかすぎる感触に一瞬、我を忘れかけるが、すぐに我に返り、泣きじゃくる彼女をしっかり抱きしめる。
「大丈夫ですかぃ?しーちゃん?」
「ワアアアアンッ、軍曹~!!」
「よし、よし、おっかなかったっすね~!大丈夫っすよ。」
自分の胸にすっぽり収まり、スンスンする詩音の髪の和やかな匂いが鼻孔を擽う。
正直、マシュマロみたいに、もみもみかつ弾力ありきの彼女のわがままボデー(よく見りゃ巨乳)の感触を楽しみたいが、彼女に飛びつかれる=攻撃の対象にされる事に改めて気づく。
しかも相手は更に増えそうだ。きーちゃんが起こした爆煙の中から、いくつもの血走った目が向けられている。そこに委員長ときーちゃんも含まれているのは言うまでもない。オマケに
相手は…
「全員、女子と来たよ。場面違えば、マジ、エロゲのハーレムルートなんだけど…」
「軍曹、きっさまぁ~!クラスのカースト最下層が調子こきやがってぇー」
唸り、こちらに距離を詰める委員長、きーちゃんに至っては指をボキボキ鳴らし、今にも飛びかかってきそうだ。
「まずいな。大将。これはしーさんが今日に限って同性に好かれるフェロモンムンムンもしくは、今まで兆候いくつもあり、溜まりに溜まった欲望を、委員長を皮切りに爆発させたとしか思えない状況だぜ?」
「そんな説明で片づけられる話かよ?現状打破に一つも役にたたねぇぞ?そして、いつの間にか俺を責任者にするな。」
「だって、軍曹!」
「だって、軍曹~!!」
顔面に靴跡をつけたモヒカンが軽く責任押し付けトークと懇願ボイスをかます。しーさんに至っては軍曹の耳元で非常にイイ香りを彼の鼻孔に容赦なく叩き込めながら、甘え声を
出す。
軍曹は自分に刺さる視線の強さが一気に増した事を肌で実感する。
委員長ときーさんが代表と言った感じでこちらに先陣を切り、後ろに数十人の女子、女子!が続く。隣に並んだモヒカンが呟く。
「これが、女子力か…?」
「ぜってぇ、違うよ!馬鹿!逃避すんな。現実!しかし、ざっと見40人弱…不味いな。
とても防ぎきれるモノじゃねぇ…そして、ちなみにしーさん!!」
「ハイッ?」
首に腕を回し、だっこ固定絶対のしーさんが不思議そうな顔で小首を傾げる。その距離30センチ。クラスの女神と俺30センチ、だが、その現実30センチの距離は次の一言で心象距離300メートルくらいに広がる事だろう。
「仮の話だけどさ。40人くらい相手に…平気?」
「えっ?えっ?パードン(もう一回)です。」
「い、いや、仮の話だけどさ。例えばね。これからしーさんがHRぶっちぎりで、こんだけの惨状、教師以下誰も駆けつけてこないという、助けが恐らく来ない状況で。最前の策の
一つとしてね。彼女達の欲望を満たして、即解決って感じはどうかな~っ?な~んて。」
しーさんの大きな瞳が考え中、考え中といった感じでローディングして、数秒。つぶらなお目目がブワッと洪水、涙でいっぱいになり、そのまま勢いよく頬を張られる軍曹。
(だが、女の子の柔肌+か弱しプ二手に興奮と歓喜を隠し切れない自分もいる)
更に、首に回した彼女の腕に力が入り、今や頬と頬の距離0センチ、胸と胸の距離、0通り越して+1センチ(食い込んでるの意)の状態になる。そして、そのまま、うわん、うわんと大音量のセイレーンボイス(泣き声)が追加された。
「うわあぁん、やだ、やだー!無理です。絶対に無理だし、嫌です。」
「だ、大丈夫!まくは、きっと大丈夫!大丈夫なままで帰してもらえるから。」
「まくって、何ですか?そもそも相手って、もしかして…(しばらく、考え中、考え中の末、
耳まで真っ赤になるしーさん、どうやら気づいていなかったらしい。)
やっぱり無理です。絶対、無理、無理―!」
「大丈夫だ。しーさん、手術すれば、元に戻るって、エロゲで言ってた。」
「みゃぁああーん、絶対、嫌ですぅ~」
「おい、モヒカン、テメーのいらねぇサムズアップ、頭のとさかごとたたき折られてぇか?」
たわわな胸を軍曹のまな板の上でぷるぷる弾ませ、泣きじゃくるしーさん、不味い、絵面的に確実殺される。今や、彼等を囲む女子達の殺意の視線は旋風となって、軍曹達を取り巻き始めている。よくよく見れば包囲の輪はさらに縮まり、
後、もう一歩くらいで軍曹の喉を掻っ切れる所まで迫っている。委員長に至ってはどこから出したのか、巨大な鎌を構えている始末。
加えて、モヒカンの全然、フォローになってねぇ、フォローは火に油だ。
な、何か打開策を、妥協点を見つけねば…軍曹はゾンビのごとく、群れ、手を伸ばす
彼女達に向かって、声を張り上げた。
「オイ、ちなみにお前ら。聞くけどよ。仮に相手するにしても、せ、せい、いや、
くんずほぐれず体ピッタシ、肌色爆発!まぐわーぅなんて事はしねぇよな?」
「何言ってんだ!馬鹿野郎。骨までしゃぶしゃぶじゃ、ボケェッ!」
と男顔負けで吠える委員長。
「抱きしめろ!ギュッてギュギュッてな!そう、まるで雑巾絞りのように
(例えが女子じゃねぇ)」
両肩の筋肉を脈動させ、語るはきーさん、後は・・・
「断然!二人はゆりゆり!スーパーハードタイム!!」
「40、50喜んで!」
「キヒィッ、破く!ただ、ひたすらに破くのみよ!」
と罵詈雑言狂喜の女子の乱舞!乱舞!しーさんの気持ちも悲しみの理由も一切
お構いなし!これ愛?断じて否。連中はただ、彼女を玩具に、欲望の捌け口にしたいだけ…
(くそったれのゴーカン魔共が…)
心のつぶやきはそのまま有限実行。迷いは無し!
「交渉決裂!最早、これまで!」
しーさんの悲鳴も懇願は、もう十分!聞いた。上着のホルスターから“切り札”である
“自動拳銃ベレッタ92F”を引き抜き、天井に向かって2発発射し、悪鬼(悪女?)
の群れに突進した…
伊達にあだ名が軍曹という訳ではない。委員長の言う能力者(?)のように何でもアリが闊歩する時代、こちらだってそれ相応の経歴だ。
駐留軍の倉庫を遅い、奪ったベレッタには15発の弾が装填されている。さすがに学友を撃つ訳にはいかないので、外しているが、連続した銃声という非日常に群れた女子達の動きが一気に乱れていく。
きーちゃんの腕力いっぱいパンチは
「せっかくだから、俺は女子のみなさんとぉっ!」
と裏切りを宣言したモヒカンを盾に回避し、目指す教室入口までを走り抜ける。しーさんを
抱えたまま、教壇を盾にした段階で、ベレッタの残弾は5発を切った。
「しーさん、後は俺が援護するから、そのまま廊下を出て、学校から脱出するんだ。オーケー!」
返事の代わりにキッと涙目、しーさんが腕と胸をギュッという感じで抱きしめを
加力させる。駄目だ、離れてくれる様子がねぇっ!自分の死亡率は上がる一方だ。
「てんめぇ、何イチャコラッしてんだぁっ?」
呪いの嘶きと共に委員長のデスサイズ(大鎌)が教壇を真っ二つにする。飛び散った破片で、
相手の視界が一瞬塞がれるのを見逃さない。振り向きざまベレッタの残弾を全て鎌に撃ちこむ。
5回分の衝撃を喰らい、よろめく委員長を背にし、廊下に走りだす。お姫様抱っこ?(手首ガッチリガチ抱っこ)は健在のままだ。
改めて、外に出て気づく。廊下、いや、学校全体が蠢動している。この地響きはまさか…
前方の階段踊り場からひらひらのスカートの群れが見え始める。
苦笑した軍曹は空のベレッタを投げ捨て、自身の腕に抱かれる彼女に視線を移し、尋ねた。
「しーさん、後は援護するから、学校から脱出する?オーケー?」
返事の代わり彼女の腕と胸の“ギュッ”が更に強まった…(終)
ユリ・ハードネス 低迷アクション @0516001a
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