ひまわり

勝利だギューちゃん

第1話

「これ、なーんだ」

「何だか、花の種みたいだね」

「正解。じゃあ、何の種だ」

幼い僕には、わからなかった。


問いを出した、女の子は微笑んでいた。

でも、名前はもちろん、顔も思い出せない。


でも・・・


「これはね、ひまわりの種だよ」

「ひまわり?あの大きな」

女の子は、頷いていたように思う。


「ひまわりってすごいね。こんなに小さい種なのに、

大輪の花を咲かせることができる」

当時の僕は、素直に凄いと思った。


「○○くんも、ひまわりみたいになってね。

いつか、大輪の花を咲かせる日を、楽しみにしているよ」

「うん、約束する」


それっきり、その子とは会っていない。

ただ、その時にその子から、もらったひまわりは、大切に育てている。


今では庭一面に咲きほこっている。


今、僕は高校生になった。

今僕は、大きくなれたのか?

否、なれていない。


体は、年相応になったが、心は小さい種まんまだ。

種はすぐに巻かないと意味はない。


自分で土を耕し、自分で種を巻き、自分で育てる・・・

でも、どんな花が咲くのかは、運次第・・・


何でも運のせいにすれば楽だが、いずれ自分に帰ってくる。


ある日、僕の庭のひまわりを見つめている女の子がいた。

僕と同じくらいだろうか?

まあ、見るだけならと、そっとしておいた。


「あのう、この家の方ですか?」

女の子のほうから、声をかけてきた。

「そうですけど・・・この花がどうかしましたか?」

「近く出見せてもらっていいですか?」

知らない人の家の花を見せてもらうなんて、警戒心がないのか・・・


でも、害はなさそうだったので、招き入れた。


その子は、まじまじと、そして真剣に、ひまわりを見ていた。


「ひまわりって、凄いですね」

「どうしてですか?」

「春はとても小さいのに、夏はこんなにも、大きくなる」

「ええ」

「そして、いつも太陽を向いている・・・いつも、未来を見てるんですね」

言われてみると、確かにそうだ・・・


でも、この会話、どこかで聞いたような・・・


「あなたの心は、まだ種が巻かれていませんね」

「えっ?」

「でも。あなたは土を耕しました。後は種をまくだけです。

そして、努力と言う名の世話をすれば、きっと夏には、満開になります」


え・・・まさか・・・

薄れていた記憶が蘇って行った。


「思いだした?」

「うん」

思い出したよ・・・はっきりと・・・


「お互い、大きくなったね。久しぶり」


もう、時間はかからなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ひまわり 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る