魔女裁判
もしかしたら彼は敵かもしれませんので、探りを入れる必要がありそうです。
「魔女って恐ろしいですね。もしかして魔女がこの街にもいるのですか?」
「そう。どこの街でも魔女はいるものだよ。隠してることが多いみたい」
「身近にいたら怖いですね。この街の中なら話くらいしたことありそうですし」
現に今、お話していますしね。平和なこの街の失踪はほぼ私が原因ですし、私が魔女ということになるのでしょう。
「確かに。令嬢のイチカちゃんは人との接点が多そうだしね」
「接点はどうでしょうね。私あまり人から好かれなくて」
「イチカちゃんのような素敵な女の子が魔女の手にかけられたら、この世界の大きな損失だよ。そうなる前に絶対に見つけて裁判にかけるって誓わせて」
重いです。海外では聞いているだけでいたたまれなくなる言葉を言うのが当たり前なのでしょうか。なんだかもの凄くここから立ち去りたいです。
どうしていいか分からないので、頷くだけにとどめます。
「イチカちゃんは怖い思いをしたことある?」
「怖いといえば人からの目線ですかね」
「なら、身寄りのない人ならどうでしょうか? 殺されても悲しむ人はいませんよ」
「いちかちゃん...。君は人が亡くなるってどう思う? 僕は例え仲良くなくても自分の周りで起こると悲しくなるよ。だから魔女は排除しなければいけないんだ」
「けれど、魔女も人間かもしれません。悪魔のような扱いをするのはいかがなものでしょうか?」
「魔女は人間の皮を被っているだけで、人ではないよ。だから、火炙りにもできる」
私はやはりおかしいのかもしれません。幼い頃から唯一、私によくしてくれた身内を薔薇にしたことがありました。その時は悲しいどころか、感動すらしました。同時に、もう私によくしてくれる人はいないのだと、残念な気持ちにもなりました。今でも時々思うのです。あの人が生きてたらよかったと。まあ、薔薇にしたのは私なのですが。それに比べて”普通の人”は羨ましいです。誰にも迷惑をかけることなく、ステンドグラス程度で感動できます。しかし、私が感動しようとすると、世間から咎められてしまいます。これは、不合理です。
私は、この日からテスラの元に通うようになりました。別に恋愛感情を抱いているからではありません。
ただ、遊んで欲しかったのです。幼い頃から周囲からは、この藤色の目のせいで畏怖され、散々な仕打ちを受けてきました。実の両親からもです。今は仲良くやっていますが、あまり好かれていないのはわかっています。けれど、それも仕方がありません。突然目の色が藤色の子どもが生まれたら、誰だって不吉に思ってもおかしくはないでしょうから。それに、一応は名家でもありますので、私の存在で実権が下がってしまうことを気にしていたのでしょう。
だから、私という”魔女”にいつたどり着くかという遊びをしているのです。これは、ゲームです。だから、見つかってもいいのです。これまで何度も遊びに来ている私に情がうつってきたようですし。いざ、私にたどり着いた時にどうするのか見ものです。
復讐の魔女 KACLA −カクラ− @kacla
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