3. 魔女は私です

教会に入ると中は暖かい光に満ちていました。テスラが指を指します。


「イチカちゃん、上を見て! 晴れてるから、ステンドグラスから綺麗な光が降りそそいでる。まるで祝福されてるみたいだね」


 綺麗...? 私には、これを見て綺麗だと思えません。もちろん、教会が工事中だったからではありません。

 確かにガラスを通して変化した暖かな光が、私たちを包んでいます。きっと、”普通の人”が見たら感動するのでしょう。けれど、私はこれを見て綺麗だとは感じられません。感性の問題です。


「綺麗な光ですね。たくさんの私たちを包む光が幻想的です」


 うっとり顔で嘘をつきました。しかも教会でです。罰当たりですが、信じていないので許してほしいものです。そもそも神様は、きっと私に嫌気がさしていますし。なにせ私は、これまで嘘を積み重ね、人を観賞物としてきましたから。

 あ。そういえば身内を鑑賞物にしたのは、まずかったかもしれませんね。あのあと転んで怪我しちゃいましたから。膝に跡が残っちゃってます。


 中に入れてもらえたので、周囲を観察してみます。

 ふと、教会の壁の絵に目が吸い寄せられました。

 その絵は、十字架に貼り付けられた人が足下から火で熱せられている絵です。恐ろしくも生命が散っていく瞬間の儚さを描いたです。


「あの絵は、なんですか? 人が燃やされてる絵です!」


 思わず口に出してしまいました。もしかしたら、人を燃やすことに美しさを見いだす人もいるのかもしれないと思ったからです。だとしたら、少し私に近いものがあるのかもしれません。私が異常者ではないことを世間に知らしめる機会になるでしょう。そんな一抹の期待が私を興奮させます。


「ああ、あれはね。魔女裁判の絵だよ。最近は、裁判を異端視する人は多いけどね。けれど何人か自白してる。ってことはいるってことなんだ」

「魔女裁判・・・? ですか?」

「僕たちはね、人の失踪とか不審死とか事件の裏には、魔女が裏で手を引いていると確信してるんだよ。だから、魔女には制裁が必要なんだよ」


 人の失踪と不審死...。それって私の十八番おはこじゃないですか。

つまり、この概念に当てはめると私は魔女ということになります。もし見つかったら、裁判にかけられて、私もこんな風にされてしまうのでしょうか? それは嫌です。

 私は苦痛を味わいたくないので、できることならナイフでひと刺しに殺されるのが理想です。天寿をまっとう出来ないのは分かっていますので。

 彼はいきいきとした声で続けます。


「ただね、その考えを古いと異端視する人もいるんだけど、それでは謎の失踪は減らない。だから、魔女は撲滅させるべきなんだよ」


 正義の名のもとならなんでもしていいということなのでしょう。思想が強いですね。顔が好みなだけに残念です。彼はサイコパスか何かじゃないでしょうか。鳥肌が立ちます。

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