第2話

花は実之助とうめえを連れて買ひ物にきた。

市場と呼ばれている所である。


実之助はオレンジを見つけて、それをシャツのなかにいれてみせると、

「妊娠しちゃつた」

と云つた。

そしてをぐをぐと呻くとそれをシャツからだして籠に戻した。


それをうけて花は梨を見つけてシャツに入れた。

「あんたより大きな赤子を産みそう」

そう云うと、はつと気合いを吐くとともにその子を産んだ。

実之助は目を白黒させるのであつた。


ふたりがそうしてちょけている横で、うめえが離れた所からスイカを持ってきて到着した。

彼は頭の上に掲げるようにしてスイカを持つてゐた。


「彼は何をしようとしているの?」

「きつとあれがうめえの産みたい子なんだ!」

ふたりは唾を呑みこむと、一心にうめえをみつめる。

うめえは掲げたスイカの下であんぐりと口をあけると、スイカを落つことし、もむもむとスイカを呑んでしまつた。


「aaugh...」

実之助は卒倒してしまゐ、大変。

花もひたひに手の甲を当てて、くらくらする頭をおさへた。


うめえのおなかは妊娠したようにぽつこりである。


ひーひーふー、ひーひーふー。


汗をかきかきうめえはその子を産んだ。

そして花に怒られ、それをきちんと籠に戻しに走ったのだつた。

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花の火星居住日記。 戸 琴子 @kinoko4kirai

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