第81話
『それでは文化祭一日目、各部門現在の順位の発表を始めます』
文化祭一日目も無事終了し、クラス全員で教室の片付けを行なっていると校内全体に放送が流れる。
この発表は一日目、二日目、そして合計と三回発表がある。
とりたいのは三回目の合計、つまり今年の各部優秀賞結果発表だ。
他は最悪取れなくてもよい。
放送部が各部門の現在トップを一つずつ読み上げてゆく。
廊下からトップに選ばれた他クラスの歓声が聞こえる中、クラスの者は皆教室のスピーカーへと視線を向けていた。
「午前中結構来てくれたから多分問題ないだろ」
「うんうん、売り上げも予想してた通りだったし〜」
拓也や白石と同じく、周囲のクラスメイトたちも手応えを感じているように見える。
大丈夫、やれることはやった。
心配することはない……筈だ。
『次に売り上げ部門の発表です』
ついに本命の発表がされる。
横にいる佐浦が願うように手を組む。
俺も息を呑んで待っていると、第三位が発表されたその時だった。
『第二位、一年生の模擬店クレープ屋です、続いて第一位は……』
「――え」
その発表に、理解が一瞬遅れる。
クレープを販売していたクラスは俺たちだ。
だから俺たちが――。
『あちゃー二位か』
『惜しかったな』
『まあでも一位のドリンク屋は確かに納得だわ』
『結構種類取り揃えてたしねー』
クラスメイトたちはその結果を聞いて少々悔やみつつもその結果を受け入れる。
拓也たちも苦笑して片付けに戻って行くが、そんな中一人俺は未だ足が動かずにいた。
◇ ◇ ◇
「今日は負けちまったが、明日はトップ取ろうな」
「そうだね〜そう言えば私いい案思いついたんだよね〜」
「……その顔、あんまり良いものじゃなさそうだな」
「ふっふっふ〜明日分かるよ、お楽しみに〜」
下校中、前を歩く拓也と白石は明日のことを既に企画してくれている。
実行委員は俺だというのに、そんな自分は先程の発表が頭から離れなかった。
結果は二位、普通に考えれば初日からトップスリーに入っていれば十分な成果だ。
しかし俺が狙うは総合成績一位。
このままで、明日は一位が取れるのか?
「だ、大丈夫……斉藤君?」
苦悩する俺を見つけて話しかけて来たのは、横を歩く佐浦だった。
そうとう俺の顔が酷かったのか、こちらを見る佐浦は不安そうにしている。
「だ、大丈夫だ、ちょっと今日の結果が残念だっただけだ」
「……斉藤君」
「明日は一位取って、最優秀賞を……」
「――あ、あの……さ、斉藤君、この後……少しいいかな?」
横を歩いていた佐浦は、俺の言葉を聞いてその足を止める。
声は普段通り弱々しいままだが、前髪の隙間から見えるその瞳は揺れつつも真っ直ぐに俺を見つめていた。
「行ってこいよ衛介」
「拓也……」
「実行委員同士、何か良い案を考えて来てくれよな」
「……ああ、分かった」
このまま一人で煮詰まってても仕方ない。
一人より二人、ここは佐浦に力を借りよう。
「そ、それじゃあ朽木君、杏子ちゃん……また明日」
「おう、またな二人とも」
「またね〜」
手を振る拓也たちと俺たちは別れる。
二人の後ろ姿が見えなくなった辺りで、佐浦はゆっくりと歩き出した。
しかしこの後、佐浦は俺に予想出来なかった言葉を告げてきた。
「斉藤君……貴方のことが好きです――」
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