第65話 ss 其の壱
※投稿が遅れそうなので、少しラブなコメディを挟みます。
◇ ◇ ◇
麗奈の父親と初対面してから数週間。
世間は夏休みに突入していた。
八月の陽気というのはそれはもう凄まじく、少し外を歩いただけで脂汗が滲み出てくる程だ。
都会の夏は暑いと聞いていたが、ここまでとは正直思わなかった。
しかしそんな中、俺はとある理由でそんな地獄にいた。
効果のあるのか分からないが、少しでも涼しい道を選ぶ俺は、打ち水をされたアスファルト道を歩きながら駅へと足を運ぶ。
向かう先は隣町、そこに俺は用事があるのだ。
「くそ、あっちぃ……」
ぼやいでも仕方ないのは重々承知だが、ぼやかずにはいられない。
こんな猛暑の中、無理矢理俺を引っ張り出した白石には一言いってやりたいが、借りがあるのでそこはぐっと堪えた。
「……こんな日に買い物とか、勘弁してくれよ」
照りつける太陽を手で遮りながら、俺はそんな事を呟きアスファルト道を歩くのだった。
◇ ◇ ◇
「おーいこっちこっち〜」
普段使わない分、なれない路線に悪戦苦闘してしまったが、無事に隣町に到着。
すると改札を出て直ぐの所に、まだ集合時間でもないというのに見知った顔ぶれが並んでいる。
白石、拓也、佐浦……それから麗奈。
今回はこのメンバーで買い物をするらしい。
発案者は白石なので、それ以外の事は詳しくは聞かされていない。
「遅いぞ斉藤っち!」
「まだ約束の五分前だぞ」
「だ、大丈夫だよ斉藤君。私たちも今来たばっかりだから!」
「え〜、茜はもっと前に居たよね〜?」
「あ、杏子ちゃん!」
『ごめんごめん』と、申し訳さゼロな謝罪を佐浦にした白石は、やっと揃った俺たちに向けて、これから向かう先を堂々と言い放つ。
「それじゃあ一先ず――そこのビルで水着でも見ますか」
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