第56話 番外編 女は敏感、男は鈍感 其の弐

 それは突然の出来事だった。


 今日の学業も無事終わり、私は普段通り帰宅していた。

 クラスの皆は放課後の予定を笑談していたが、私にはそんなものは存在しない。


 しかしそれが不満という訳でない。

 学校に残っていると、面倒にも男子たちが放課後の予定を聞いてくるからだ。


 可愛い過ぎるのも、少し考えものね。


 そんな事を考えていると見慣れた駅前に着く。

 着くと言っても、正確には通るだけなので、通過するが正しいかもしれない。

 そんな些細な間違いを自分で指摘していると、何やら普段の駅前とは違う事に気がつく。


 駅前には小規模なステージ台があり、普段は使用されていないのだが、今日はそこに人混みが出来ていた。

 何事かと思いステージに目を向けると、数名の女子高生が横並びに立っている。


「女子高生ミスコン……ね」


 ステージ台の上に書かれたその文字を見て、私は駅前の人混みに答えを得る。

 そう言えば周りにいるのは男子ばかりで、よく見るとうちの生徒の男子も立っているではないか。


『エントリーナンバー五番、〇〇高校!』


 スピーカーから大音量で発されるその言葉と共に、ステージに並ぶ女子生徒の内の一人が前に出た。

 あの制服は……確か隣駅の学校のものだ。


 その者が前に出ると、観客達は歓声を上げた。

 その様子から、恐らく今回のミスコン優勝候補であろうその女子生徒は、堂々とした振る舞いで観客に手を振った。


『みんなー、投票よ・ろ・し・く・ね?』


 可愛らしくウインクするその女子生徒に、歓声は更に大きくなる。

 きっちりと観客の心を掴んだその女子生徒は満足げに一歩下がった。

 このミスコンは彼女の優勝で間違い無いだろう。


「ま、私には関係ないのだけれど」


 そう一人小さく呟く私は、その場を離れようとする。

 すると私の前に、一人のスーツ姿の女性が立ち塞がった。


「貴方――ミスコンに興味はないかしら?」


 ニコニコしながらその女性はそう私に問うのだった。

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