第41話
朝の一件から放課後、ホームルームが終わった俺は鞄を肩に掛けてクラスを出ようとする。
しかしクラスを出る直前に、背後から白石に呼び止められた。
『この後駅近のカフェで集合ね〜』
正直断っても良かったのだが白石には借りがある。
いつまでも返さないでいると後が怖いのでその誘いに俺は首を縦に振った。
そんなこんなで駅周辺に着いたのだが、現地に着いた辺りである事に気付く。
それは駅周辺にはカフェが複数あるという事だ。
白石は『駅近のカフェ』としか言っていなかった。
これでは何処の店なのか分からないではないか。
「ったく、店の情報くらい伝えておけよな」
「いや〜ごめんごめん。ちょっと急いでてさ」
「うおっ!」
スマホを取り出し白石に連絡を入れようとした直後、背後から脅かすように白石が声を掛けてきた。
それに驚く俺を見て、してやったりという顔をする白石に呆れながらも、後を付いて行きながら今日の集まりの内容を確認する。
「……それで、この集まりの目的は何なんだよ?」
「決まってるよ〜、お祝いパーティーだよ!」
「お祝いパーティー?」
その単語に俺は眉をひそめる。
祝う事など最近あっただろうか。
「やだな〜斉藤っち、蒼井っちと八神っちのお祝いだよ〜」
「……ああ、それか」
正直あれをお祝いと呼ぶのが果たして相応しいかは分からない。
しかし悪評が無くなったという面では、めでたい事なのは確かだ。
ならばこれは『お祝いパーティー』と呼んでも良いのかもしれないな。
それにしてもそんな面倒なものに参加しなければならないとは、断れば良かったとつくづく思う。
それにこのお祝いパーティーは蒼井と八神が主役となるのだろう。
ならばその二人は必ず参加しているという事だ。
正直なところ、今この二人には会いたくない。
特に蒼井には『助ける』などと大口を叩いていながら、実際に救っているのは麗奈の力が一番大きい。
それなのにそこに俺が来ては、まるででかい顔をしているようで、何だが恥ずかしい。
仮に蒼井も八神もそうは思っていなくとも、俺の方がとても居心地が悪く感じてしまう。
今からでも断るべきか、いやもう遅いか。
「着いたよ〜」
俺の心境とは裏腹に、無慈悲にも時間は進み店へと着いてしまった。
店の看板には『フォレスト』と書かれており、その名前から伝わってくる通り、森をモチーフにしたその店は、外装に緑をふんだんに使用している。
女子には人気を博しそうな雰囲気の店構えだ。
木製のその店の扉を開いた白石は一足先に入店する。
俺も後を追い中へと入った。
店内はカウンター席とテーブルが数席しか無い小さめの作りになっている。
しかし所々に散りばめられた観葉植物と暖色の照明が、店内をまるで大自然の森の中のにある庭園カフェと錯覚させる。
そんな大自然を感じさせるカフェの奥の席に、うちの学校の制服を着た複数の人影が見えた。
先にその席に着いている白石がこちらに手招きをしている。
俺はその招きに乗り、奥へと足を運んだ。
そこには予想通り金髪不良少女こと蒼井奈帆と、桃髪ロリータもとい八神桃の姿があった。
二人とも俺を見るに別々の表情を見せる。
蒼井は頬を桜色に染め照れた顔で、八神は頬杖をついて退屈そうにしていた。
「おっそいわよ、待ちくたびれたんですけど」
「まあまあ八神っち、このタピオカドリンク奢るから〜斉藤っちが」
「どうして俺になる」
「……あんた本当に私に奢るの好きよね、まさか私の事狙ってんの?」
白石の余計な一言により、八神が自身の身を抱いて俺を睨みつけてくる。
そんな態度に俺は大きく嘆息を吐いた。
「――いいから始めましょう、白石さん」
俺が頭を抱えていると、聞き慣れたその声が白石に指揮をとらせようとする。
その声の方に顔を向けると、銀髪美少女こと麗奈がそこにいた。
麗奈は自身の隣の席を叩いて俺を横に招く。
それに従って席に着くと、軽く咳払いした白石は、パーティーの進行役として話を始めた。
「それじゃあ、御集りの皆さまお待たせしました〜。これから斉藤衛介君感謝パーティーを開催していきま〜す!」
「……はい?」
堂々たるその白石の言葉に俺は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてしまったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます