第26話 麗奈の一日 其の四(衛介視点)
「……何か派手なの多くね?」
ベッドに腰掛けながら俺は麗奈にそう聞いた。
そう思ったのは昼間の下着を隠す時からだ。
麗奈からメッセージが届いた時、一体何処に隠せば良いかかなり悩んだ。
何故なら相手はあの白石だからだ。
一度白石の標的にされたら、逃れるのは中々に難しい。
そんな白石に俺が取った行動は『パーソナルスペースによる防衛』だった。
幾ら白石でも俺が寝ているベッドをずかずかと上がって調べる程非常識な奴ではない。
それに俺は病人だ。
もしそのようなことがあっても『風邪が悪化するから止めろ』と言えば止めさせられる。
まあ今回はその必要は無かったので助かったのだが。
兎も角俺は麗奈の下着を見られずに済んだのだった。
下着について聞かれた麗奈はゆっくりとこちらを振り返る。
そして身を抱いて俺をジト目で見てきた。
「私がどんな下着を履こうが私の勝手な筈でしょう。それとも何、そんなに私の下着が気になってしょうがないの? そんなに現役女子高生の下着に興味津々なの?」
「い、いや……普通に気になっただけだ」
「へぇ、私の色とりどりの下着を舐め回すように見ておいて興味が無いなんて、どの口が言っているのかしら」
「そんな見方はしてねぇけど!?」
確かに麗奈の下着全てを俺は見てしまっている。
しかしそれは仕方の無い事、不可抗力だ。
決して態とではない。
「じゃあ貴方は『僕は一切女子高校の下着に興味はありません。ホモです』と約束出来る?」
「ホモじゃねぇよ!」
「まあ貴方がホモだったらこっちも困るのだけれど」
「だからホモじゃねぇから!」
どうしてそんなにホモにしたいんだよ。
それにしても俺はどうしてこんな事を聞いてしまったんだろう。
本当に後悔している。
確かに麗奈の下着を見て初めはエロいなと思った。
しかしそのままだと普通にセクハラなので、少し捻ったのだがどっちみち失言だった。
「……悪かった、まだ風邪が治ってなくてよく分かんない事を聞いた」
「そう見たいね、私も聞かなかった事にするわ」
どうやらこの件は水に流してくれるようだ。
俺も今回のことはきっぱり忘れよう。
忘れられるか分からないが。
「その代わり、私の質問にも答えてくれたらだけど」
「は?」
「質問に答えてくれたら、忘れてあげるわ」
そう言って麗奈は再び引き出しを開けて下着二枚を取り出した。
一つは真っ赤な単色のもの、もう一つは漆黒に少し柄が入ったもの。
それを見せつけるように両手で持つと、いつもの無表情のまま聞いてきた。
「貴方の好みはどっち?」
「答えられるか!」
何だその究極の選択は。
しかし麗奈は全く動じず同じ事を再び聞いてくる。
「どっちが好み?」
無表情で二枚の下着を持ってどちらが好みかと美少女に聞かれるこの絵面。
誰が想像出来ただろうか。
本当にどうしてあんな事を口走ったのかと心底後悔している。
しかし先に聞いたのは俺なんだ。
ここは責任を持って答えてやらなければならない。
俺は深く息を吐き、目線は麗奈に合わせずに漆黒の下着に指をさした。
「……黒だ。お前にはそれが似合う」
「……」
「言っておくが、深い意味は無いからな」
「そう」
そう言って俺はベッドに横になる。
今日はもう疲れたので、このまま寝よう。
そんな事を考えていると、黒の下着を持ったまま麗奈は再び話しかけてきた。
「ならこれから貴方と出かける時は――これを履くことにするわ」
「は!?」
「私もこれがお気に入りだもの」
突然そんな事を言い出す麗奈に、俺は飛び起きて反応する。
すると麗奈は嬉しそうに微笑んでいた。
「冗談よ、ふふ」
全く、寝る前にそんなものを見せるなよ。
寝づらくなるだろうが。
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