第25話 麗奈の一日 其の四

「私には分かる、絶対あの部屋に何かある!」

「でも実際何も無かったよ?」

「い〜や、何処かにある。ある筈なんだけどな〜」


 部屋を後にした私たちは駅の方へと足を動かす。

 そんな中、未だあの部屋に未練がある白石さんは、佐浦さんに不満を吐き出していた。


 本来ならあの引き出しを引いた時点で私の下着が現れて大惨事になっていた。

 しかしそこには私の下着は無かった。


 なら下着は一体何処へ行ったのだろうか。

 私も行方が気になってしまう。


「大丈夫銀さん?」


 眉間に皺を作っている私に、朽木君は心配そうに声を掛けてきた。

 それに私は首を縦に振って答える。


「そっか、今日はどうだった?」

「楽しかったわ」


 皆で集まって何かをするのは楽しかった。

 買い物したり、お話ししたり。


 いつも一人でいる分それが今回は特に感じられた。

 そんな私を見て、朽木君は嬉しそうな笑顔を向けてくる。


「おっと、もう着いちゃったな」


 そうこうしているといつのまにか駅前に着いていた。

 私以外は皆電車通学なので、三人とはここでお別れだ。


「それじゃあ銀さん、今日はありがとう」

「こちらこそ」


 それを最後に三人は改札の奥へと消えて行った。

 後ろ姿が見えなくなったところで、私は今来た道を戻り始める。


『今から戻るわ』


 そう衛介に一言入れたら、私は再びあの部屋へと向かうのだった。



 ◇ ◇ ◇



 部屋に戻る頃には日が暮れて夕飯時になっていた。

 そんな中部屋のドアを開くと、キッチンにラップの掛かった食事が置いてある。


 病人だというのにどうやら衛介は私の夕飯を作ってくれていたらしい。


 確かに私は料理は出来ない。

 しかし別に今日くらいインスタントの物でも良かった。


 奥に行くとベッドでスマホを弄っている衛介がいた。

 私は温めた料理を円卓に置いたら、その横で合掌して食べ始める。


「態々ありがとう」

「どういたしまして」


 そう言って私は静かに食事を続ける。

 そして綺麗に平らげたら、いよいよ衛介にあの事を聞いてみた。


「それで、結局私のパンツたちは何処に隠したの?」


 部屋中見て回っていた白石さんが見つけられなかったのだ。

 なら私の下着は一体何処へ行ったのか。


 それを聞かれた衛介はばつが悪そうな顔をする。


「怒るなよ?」


 そういって自身の横にあるミケを持ち上げて側面のジッパーをゆっくりと下ろした。


 するとその中から私の下着たちが現れた。

 成る程、そこにあったのか。


 全て取り出して渡してきたそれを、再び引き出しの中に仕舞う。


 すると今度は衛介が気まずそうに話しかけてきた。


「……何か派手なの多くね?」


 頬をかいて目を逸らしながら、衛介はぼそりとそう言ったのだった。

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