第2話 「隠蔽少女、時野双葉」
「助けてくれて……ありがとう……」
少女はそう言ったが、
そもそもこの少女なら一人でどうとでも出来た事態だったからだ。
しかし秋夜はそれを指摘するほど野暮でもない。が、それはそれとして少女の内から溢れる強者のオーラに秋夜は興味を示していた。
「俺は
「
秋夜の目付きの悪さに萎縮しながら、
幼少期から見てきた反応を気にせずに秋夜は次の質問を投げかける。
「双葉はなぜ悲鳴なんかあげたんだ?」
「……っ!?」
瞬く間に双葉の顔が動揺と警戒の色に切り替わった。しっかり『隠蔽』していたはずの実力を眼前の男はあっさりと見破ったためだ。
「黒神…秋夜さんでしたね……。あなた、私の『隠蔽魔術』を見破るなんて……何者ですか?」
可愛らしい双葉にこうも露骨に警戒されると、さすがの秋夜もショックなようで、出来るだけ優しく話すようにする。
「俺は周りとは少し違った『魔術』を使うってだけの『ハンター』さ。それも君の言う『隠蔽魔術』には負けるけどね」
「私の、『隠蔽魔術』は……確かに、ほぼオリジナルみたいな、もの」
「そうなのか。俺のは『肉体魔術』っていうんだが、もしよかったらお互いの『魔術』について話さないか?」
秋夜は、双葉と彼女の『魔術』に興味を持ったようだ。そしてついでに自らの『肉体魔術』を広めるつもりでもあるらしい。
双葉は若干考えたが、秋夜の手の内を探りたいという結論に至った。双葉自身の『魔術』の主な効果は既に秋夜に見破られている。ボロを出さなければ更なる能力がバレることも無いだろう。
「いいですよ……では私から、説明させていただきます……」
「おう、よろしく頼む」
「私の、『隠蔽魔術』には……自身の身を隠す、自身の実力を隠す、という2つの効果があります……。しかし、あなたみたいな桁外れな人には……見破れるみたいですね……」
秋夜は素直に感心した。ここまで演技が上手い人は中々いないな、と。
尤も、秋夜は双葉に嫌われたくはなかったので、特に指摘はしなかったが。
「んじゃ、次は俺の『肉体魔術』だな。まぁ文字通りの魔術だよ。身体強化とか、肉体に関する全般強化できる魔術だ」
「肉体に関する全般……?」
「言葉の通りだよ。好きな場所に肉体を移動させたり、どこに何の肉体があるか把握したり。ま、俺はまだ未熟だから効果範囲が狭かったり不便なんだけどな」
双葉が隠した一方で、秋夜は『肉体魔術』の全てを双葉に話した。
秋夜の方は双葉と違い、自分の『魔術』を広めたかった。秋夜は人一倍自分自身の『魔術』を認めて欲しいのだ。
「秋夜さんの、『肉体魔術』……そんなに強いのに、聞いたことも無いなんて……どういうことなんですか?」
当然の疑問だ。秋夜の説明が事実なら『肉体魔術』は最強クラスの『魔術』と言えるだろう。しかし双葉はそれを聞いたことがなかった。普通ならありえない。
それに対して秋夜は、双葉は理解してくれないだろうという確信を持ったが説明する。
「ほんの半世紀前まで、人間は『魔術』なんて使えなかったんだ。いきなり使えるようになったらそりゃ、火を出したり、雷を撃ったり、凍らせるようなものが流行るさ。そのほうがカッコいいからな」
「男のロマン……ってやつ、ですか……」
双葉はしっかり理解した。『魔物』やら『魔族』やらに人類が滅ぼされようとする中ですら、己の願望を優先するのが人間なのだと。
「アホ……ですね」
秋夜はそういう派手な『魔術』は使っていないのに、何故か言い返せなかった。
2人の声が収まり辺りが静かになった。
それを物陰からじっと見ている影が1つ……。
現代魔術の間違った使い方 いざよいあぐな @agunaiza0841
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。現代魔術の間違った使い方の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます