写真スタッフ
クラピエ海溝
第1話 写真スタッフ
屋内水族館の写真スタッフとして働いている金子は、お客さんの楽しい思い出作りのお手伝いができることにやりがいを感じていた。そして、多くの人が集まるイルカのライブ会場に出向いて、お客さんの依頼を受けて、丁寧に記念撮影に応じていた。
イルカショーが終わると、多くの人が一斉に移動し始めて大混雑。お客さんの流れに行く先を塞がれて動けなくなった金子は小さくため息を付いた。
綺麗で素敵な水族館だと思ったが、ここの水槽は小さいし、通路は狭いし、不満から嫌悪感と不快感が募っていた。私の地元の水族館の方が遥かにレベルが高い。ここは、水族館というより見世物小屋だ。
イベントが終わる度に、混雑が解消するまで待たなければならなかった。金子は人ごみを縫うように歩いて、次に人の集まる会場に向かった。こんなところでも、お客さんは今日という日の楽しみとして、足を運びに来ているのである。
最高の思い出を作るのが、写真スタッフとしての私の使命だ。
「もう少し寄って下さい」「もう一枚お願いします」「もっと笑顔で」
私の撮る写真が、お客さんの思い出の一枚として残るのだから、その責任は重大。
そこにある最高の被写体イメージになるべく近づけてから、笑顔でシャッターを切る。私の撮る写真という付加価値の創出だ。
それぞれが、それぞれで自由に、お互いに写真を取り合っているがあれはよろしくない。思い出の写真は、他人の手で取られることで輝くのである。
私の満足できる写真が撮れると、自然とお客さんから感謝を頂ける仕事なのである。この場はその切欠であり、あまり重要なことではない。
私は人間、人間同士の楽しい思い出を残すことだけを考える、新しい良好な人間関係を構築したいという非常にお節介なカメラスタッフなのである。
ちなみに、好きな動物はサメだ。そして、やはり、思い出の写真はその場所に居合わせた、それだけの人間に撮ってもらうのが最高、一番であると私は思うのだ。
写真スタッフ クラピエ海溝 @clapier_trench
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