僕と彼女の意外な共通点
空を慰めた日の夜、急に空から電話がかかってきた。
「今日はありがと」面と向かって話していないけど空がどんな様子か手に取るように分かる。
「大丈夫。気にしないで。僕も空の気持ちよく分かるし。」
その一言で空が息を呑んだのがわかった。
「同情しないって言ったよね。あれ、嘘だったの?」
空の逆鱗に触れかけたけど僕の次の言葉で空の気持ちが180度変わった気がした。
「僕も親がいないんだ…」
「……大地も?」
「うん。」
あまり、このことは話したくないけど空にだったら大丈夫だ。
「昔、両親が離婚してさ…」
普通の家族というのがどんなものか僕は知らない。
小さい頃の思い出と言えば、絶えず喧嘩している両親。
喧騒が耐えない家。
絶えず何かが飛んでくる。
そんな家。
だけど、それが僕にとっての普通だった。
ある日、両親は離れ離れになった。
「キョウギリコン」という言葉を初めてそこで知った。
僕は母に引き取られた。
でもその母もいなくなった。
そして僕は1人になった。
小学校の時は「変なの」と後ろ指を指されたりすることも多かった。
でも、もう慣れた。
なぜ神は僕の手をすり抜けるものばかり与えるのか…
僕の手には何も無い。
家族も家も居場所も…
それだけと言ってしまえばそれだけだ。
それが僕の話。
ただそれだけだ。
空は終始無言で僕の話を聞いてくれた。
「……」
お互い無言が続き、気まずい空気になる。
「大地は1人じゃないよ。」
「え?」急に言われて、すぐには認識が出来なかった。
「空、それってどういう…」空の言葉の真意が分からなかった。
「だって、大地には私がいるじゃん。大丈夫だよ。」その声は僕を暖かく包んでくれた。
気がつくと、涙が僕の頬を伝っていた。
涙が混じって声にならなかった。
それでも精一杯、「ありがとう」と伝えた。
「もう、夜も遅いし、また明日。おやすみ」
そう言うと空は電話を切った。
部屋の中で一人なったことを自覚する。
でも、僕の心を占めたのは孤独ではなく、空の温かい声とその思いだった。
また、明日空に会えることを楽しみに僕は睡魔に意識を委ねた。
美しい空の下で紡がれる物語 上田怜 @Seiryu-Rem
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