二人の急接近!

空の話はにわかには信じられない話だった。

僕の中では「孤児」というのはそれこそドラマの中の話だった。

でも、目の前の少女に親はいない…。その事実が僕の中に重くのしかかってきた。

「大地…」急に名前を呼ばれた。

「大地は私の事変な目で見ない?」

「変な目で見ないよ。確かに驚いたけど、だからといって空が変わる訳じゃない。大丈夫。」気づけば自然と言葉がでてきた。

その一言で 不安でいっぱいだった空の顔がみるみる綻んでいった。

直後、僕の体に衝撃が走った。

視界の大部分を黒いものが占める。

ようやく僕は空に抱きつかれていることに気づいた。

瞬間、僕の頭はパニックに陥る。

「…う。ありがとう大地。」

不意に聞こえてきた声で現実に引き戻される。

気がつくと僕の腕の中で空が嗚咽を漏らしていた。

「大丈夫。もう、大丈夫だから。」昔、母にそうしてもらったように空の頭を撫でた。

空が落ち着くまでずっとそうしていた。


空が泣き止んだのは結構あとのことだった。

「落ち着いた?」そう聞くと空かようやくいつもの笑顔を見せてくれた。

「ありがと」はにかみながらそう言ってくる。

「ごめん、これくらいのことしか出来ないけど…」

「ううん、全然大丈夫。」こう言ってもらえたら慰めたかいもあったものだ。

「……」

「……」

会話が途切れてしまう。まあ、無理もない。あんなことをしたらその後はどう話せばいいか僕には分からない。

「なんか恥ずかしいね…」頬を赤らめながら空がつぶやいた。

「ホントに…」今思えばよくあんなことが出来たものだと思う。

「でも、ホントありがとう。前にあの話をした時は笑われて…」

「そっか…僕はこれぐらいしか出来ないけどこんなんで良ければいくらでも大丈夫だよ。」

どちらからともなく笑い声が出てきた。

学校が閉まるまでずっと話し続けてた。


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