ずれてはいますが幸せです。

ことりぱ

第1話 高梨律の場合

ヒソヒソ…ヒソヒソ…ヒソヒソ…



授業終わりの放課後、帰り支度をするクラスメートたち。放課後遊ぶ予定をたてる男子の声に混じって、声色の違う女子たちのささやく声が聞こえる。私は聞こえないふりして帰りの準備を進めた。



ヒソヒソ…ヒソヒソ…ヒソヒソ…



あと、2分。あぁ、もうすぐ来てしまう。

周りのざわつきが徐々に大きくなっていく。



ヒソヒソ…もうすぐ来るよー…!

ヒソヒソ…キャー、楽しみー!

ヒソヒソ…はぁ、今日も素敵なんだろうなぁ…



最早ささやき声とは言えないくらい大きくなった女子たちの声が教室の扉が開く音が聞こえた途端、黄色い歓声に変わった。



ガラッ



「りつー、一緒に帰ろー?」



開いた扉にもたれ、私の名前を呼ぶ男子。



キャー!!かっこいい...

勝浦くーん!



並みの男子がやったら寒いと言われても仕方ないような、少女漫画かと見まごうキザったらしい仕草すら様になってしまうほどのイケメン。

さらさらした髪の毛はハニーブラウンに染まり、180センチはあるであろう高身長。手足は長く、細身ながらしっかりと筋肉がついており決して頼りなさを感じさせない体つき。そして、何よりもーーー



「あ、翔くん!まって、今いくよ」

「うん、慌てなくていいよ」



顔。顔がいいのだ、彼は。

しまう途中だった荷物を鞄に詰め、彼の元へ駆け寄る。

周りから送られる彼への熱気の籠った声と視線に対して、私に向けられるのは嫉妬を孕んだ視線と中傷のささやき。

そう、私が隣に立つと僻まれ疎まれてしまうほどイケメンな彼。



「おまたせ!またせちゃったね、ごめんね?」

「んーん、帰ろっか?」

「うん!」



差し出された手を当たり前のように繋ぐと更に厳しくなる周囲の視線。いつもの事と気にせずに彼と共に教室を後にする。



「今日どこか寄ってく?」

「いいよ、りつの行きたいところに行こうか」

「やった!うれしい」



彼は勝浦翔。

学校一イケメンな、私の彼氏だ。

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