異世界の種類は様々だが、その形はみな一様である

 まあ、そもそもだ。今まで散々SFやら異世界ものやら読んできてもいざ、自分の番になると何もできないものだなと。


 人間原理によると、この世界を観察できている以上、私はこの世界にとって「人間」であるので、おそらくは生きていける世界のはず…

(そうでなければ呼吸ができなくて即死しているはずである)

だが、その辺の木になっている任天堂の携帯ゲーム機のカラーバリエーションのような色の実が食べられるかどうかは別の問題である。

もしかしたらこの世界のあらゆる毒が効かないという可能性も0ではないが、何の努力もせずに地球に帰れる確率の方が高いくらいだろう。


 つまり、結局何も解決していないのだ。

すぐ死ぬがゆっくり死ぬに変わっただけである。


 今は大丈夫だが、近くに水場もない。

光学異性体とかの問題で食べられないということはなさそうだが、どんな食料が食べられるかわからない。

少なくとも地球からの助けは来ない。

学習性無力感とポジティブ思考のせめぎあいの結果、焚き木を集めることにした。

幸い、月は明るい。


 いざ、生きようと思うと野獣が怖い。

だから火が欲しい。人間だもの。


キャンプのアニメが流行った時に予習、実践しておいたアウトドアの知識がこんなところで役に立つとは思わなかった。

人生いたるところに青山在せいざんありである。(ちょっと違うか)


空が白み始めるまではひたすら虚無になって火を絶やさないように作業をしていた。

文明のあかりのない原初の闇は本能から来る恐怖を呼び起こす。


「人間は社会の中でしか生きられない。」

は誰だったかな?

とかく個人は無力感なものである。

空腹と孤独と暗闇は容易く考えを変える。

面白くなくてもいい、無難で堅実に生きていたい。

無事助かったらどこかに就職しよう。と、今度こそ固く決意した。



03:23 夜が明けた。とりあえず時計を06:00に合わせる。

あたりはまだ薄暗いがそんなに寒くはない。

火の始末をして川を探すことにする。

現代人の私の知識をもってすれば川を探すなんて……そんな知識あるわけない罠。


あてもなくこちらと思う方向に(木々の茂り方からすれば、おそらく南東)進んでいたら獣道のようなものが見えた。

少し遠くからガサガサという音がする。

思わず身構えてじりじりと後ずさる。


「誰だっ!」


大声を上げることは獣に対してはもちろん有効、人間が相手なら先手を取る意味ではまあ、そこそこ有効。

問答無用で銃撃してくるようなやからが相手でもなければ最悪のケースでも怒鳴りあいからの交渉くらいは出来るだろう。

果たして、相手は、どうでるのか……。


しばらくの沈黙の後、姿を現したのは異世界人らしき女性だった。


うん、やっちまった。


しかも、後ろに向かってめっちゃなんか叫んでるし。


異世界人の女性(以下村人A)は粗末な恰好、手には移植ごてのような刃物の様なものを持っている。

野生の世界に限らず子連れと手負いは恐ろしい。


悪く扱われないなら降参するのも一つの手という気もするが、よそ者の命がっすい世界という危険性もある。


対人ゲームで言うところの“お見合い”状態は突如崩れた。

村人Aが手の得物を捨てて跪ひざまずいたのだ。


某漫画で読んだイロコイインディアンのだまし討ち方かな?と

警戒したが、姿勢を変える気配はない。


ひとまず、命の危機が去ったら空腹と渇きが一層の強さを持って襲いかかってきた。


水と食料を分けてもらおう。

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