書店に並ぶレベルの完成された素晴らしい作品です。
張り巡らされた伏線、登場人物達一人ひとりの人生、結末まで読ませる圧倒的な筆力。ミステリー作品として素晴らしいだけではなく、作品を通じて読者に問題を問いかけ引き込む力があります。
私はこの作品における『償い』について読んでいない時間さえも何度も何度も考えました。
被害者側からの視点、加害者側からの視点と両方の視点から読み解くことでより一層物語に深みが増していき、作品に没頭しました。続きが気になって夜も眠れなくなること間違いなしです!
こんなに素晴らしく重厚な作品に出会えたことに感動しました。
本当に読んで頂きたいおすすめの作品です!ぜひご一読下さい!
邪悪な性根と、悪すぎる頭を併せ持った悪鬼によって、人生を狂わされた人々の話です。
主人公は「昏睡レイプで妊娠させられた女性から生まれた暴力の子」である女性。
ある日、自分の出生の秘密を知り、犯罪者を激しく憎むようになります。
そのせいで、本来あるべきだった彼女の生き方を、犯罪者に罪を償わせることに全振りするように。
この物語には犯罪者が複数出てきます。
正確に言うと、元・犯罪者がほとんどなのですが、彼らの自分勝手な、無責任な考え方には怒りを搔き立てられますね。
ムショに入っただけで、自分のしでかした罪が清算されたと妄想し、自分の人生を生きようとする。
他人の人生を取り返しのつかないほどに踏み潰しておいて。
ここらへんの身勝手で頭の悪すぎる思考回路の描写が見事です。
読後、ムカムカしてきますが、それが味です。
読み終わった後「馬を水辺に連れて行くことは出来ても、水を飲ませることは出来ない。罪を償う気のない罪人を、どうするのが正しいのだろう?」という、答えの出ない問いを考える気にさせられます。