第3話どっちも愛して欲しいのに
私にとって彼と話す時間は初めての連続だった。初めてこんなにも親しい友人が出来て、初めて恋をした。
彼と私の作品について話す時間は私の大き過ぎるモチベーションになっていた。
それは作家の霞詩子にとっての、ファンから作品の感想を直接もらえ意見交換の出来る嬉しい時間、だけでは次第になくなっていた。
学校では美人ともてはやされはするものの、友達の居ない霞ヶ丘詩羽にとって、それは唯一気を許せる二人だけの世界だった。
これはそんな幸せだった時間のお話。いつか壊れてしまう時間のお話。
「先輩、霞ヶ丘先輩ってば」
「何よ倫也くん」
「いや、流石に俺でも新刊の感想が聞きたいって言われて喜んで来たのに、食べ終わったらすぐに寝られたりなんかしたらヘコむんですけど」
「仕方ないじゃない。やっと色々とやる事が終わって読書が出来るって思ったら、アンデッドマガジン用のss書けなんて言われたのだから。」
「絶対、先輩その後読む予定だった本全部読んだでしょ!あっでも、先輩のss読めるのは嬉しいですありがとうございます。」
「大体、倫也くんだって、私のことほったらかして読んでたくせにそれはないんじゃないの」
「せめて読んでる間に寝ればいいのに」
「それは…、倫也くんの生の反応を見たくて」
「紛らわしい言い回しはやめましょうか!」
「でも、倫也くんが読んでる時の、素の反応を見たかったのは本当」
「だったら感想もしっかり聞いてよ~」
まあ、本当は準備の為の時間だった。彼が嬉しくなる感想を言ってくれても、つい頬がゆるんでしまわないように。
「じゃあ、お願い聞かせて」
「う~んまず、何というか安っぽい言い方かもしれないですけど、ハラハラドキドキ感が最高でした。ラノベらしからぬ恋愛小説感というか、男女の恋愛の良い意味の汚さがあるみたいな。でも、それだけじゃなくてしっかりキャラ本当に可愛いんですよ!
特に真唯が登場してからの、沙由佳が嫉妬する感じとかが途轍もなく可愛くて!あっでも真唯もz負けないくらい魅力的で…」
「って、何で先輩また顔伏せてるんですか!」
「はいはい、わかったわよ」
「先輩、寝てたからか顔赤いですよ」
「そんなのわかってるから、言わなくてもいいのよ倫也くん」
でも、そんな時間は長くは続けてくれなかった。でも、私は何だかんだ嬉しかった。それは倫也くんと一緒に創作をする事ができたから。
だから、だから、彼のメインヒロインになれなくたっていい。私は彼のなかで加藤さんを超えるヒロインを生み出すことが出来れば、私にとっては勝ち同然だ。
それにもし、彼と一緒に創った物語でそんなヒロインを生み出せることが出来れば、それは最高に楽しいことにちがいない。
こんなのは負け惜しみかもしれないけれど、それでもいい。だって私は、創作物で彼を魅力出来れば嬉しくなってしまうクリエイターだから。
「先輩、新刊読んだので感想言わせてください!」
「それじゃあ、○○時に○○で待ち合わせでね」
予定変更で霞ヶ丘先輩になりました。英梨々は書くか未定です。
会えない日々も宝物? 冴えないオタク @saenaiotakudesu
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