第2話あなたには私のことがどんなふうに見えているのかかなぁ

倫也くんとのデートの約束が出来た。それだけでこんなにも心が踊ってしまう。

だけどこの期待感や嬉しさを本人に言えないことが、もどかしくて仕方がない。

だから、その気持ちを晴らす為に、いつもよりもちょっとだけ、少しだけ気合を入れて準備しようかなぁなんて思ったのだ。


そんな訳で私はデートで着る服を買う為、ショッピングに来ていた。

今までは、特定の誰かのことを考えながら服を買うことなんてなかった。

だけど今は、どうしようもなく倫也くんのことを考えてしまう。この服を見たらどう思うだろうか、可愛いと思ってくれるだろうか?

いつもは感想なんて言ってくれない彼だけど、今回ばかりは聞いてみたい。

だってこんなにも悩んで決めたことなんて、初めての経験だったから......


それからの日々はあっと言う間に過ぎていった。クリスマスの日に作る料理の練習をしてみたり、どこに行こうかなぁって考えてみたり、デートはきっと楽しいものだけれど、それを想像する時間も思ったより楽しくて、シナリオを書く倫也くんの気持ちが少しわかったかなぁ。

そんなことを考えていると、待ち合わせ場所に着いた。

「えっと、恵。久しぶりかな?」

「まあ、久しぶりかなぁ。○インぐらいはしてたけど、直接会うのはねー。」

「それにしても、ゴメン。予定立てて貰って、俺が予定立てれば良かったんだけど。」

「ううん、大丈夫。それに結構楽しかったし。」


「それでさ、この服どう思う?」

「それを聞いちゃう?オタク男子に聞いちゃいますかー!」

「倫也くんってさ、人にはフラグ折るなとか言うけど、自分もなかなかだよね。」

「いや、勘違いだったら申し訳ないけど、あの坂の時の服を意識したのか?」

「うん、そうだよ。流石にあの服は恥ずかしいから、少し萌え系じゃないのを選んだけど。」

「あの時のも最高に萌えたけど、大人っぽい感じの服も綺麗で凄く似合ってると思う。」

「あ、ありがとう......」

服を選んでいた時は絶対に感想聞いてやろう、なんて思ってたけど実際褒められると照れてしまって言葉が出てこない。

「ところで、今日はどこ行くんだ?」

「そこはついてからのお楽しみにってことで」


「水族館?」

「そう、アニメとかでも出てたし、いいかなって。」

「確かに水族館ってデートの定番スポットな気がするな。」

「そゆこと、じゃあ入ろうか」

「そういえば、倫也くんと一緒に暗い施設に入るのって初めてじゃない?」

「確かに、暗い場所なんて俺の部屋にはとんでもない数来てたけど、映画館とか遊園地とか行ってないもんなぁ」

「まあどっちも、他の人とは行ったみたいだったけどねー」

「そうやって、突然攻撃してくるの止めよう!」

「受験終わって、時間出来たらどっちも行こうね」

「お、おう」


こうやって水族館に入った訳だけど、暗い場所に彼と居るのになんだかドキドキしていた。

「久しぶりに見たけど、魚って綺麗だねー」

「そうだな、水族館とか動物園とかそういう施設って、小さな頃は行ってた気がするのに突然行かなくなるよなぁ」

「そうそう、昔は好きだったのにねー。私も最後に行ったのって、親戚の子に連れて行ってーって言われた時くらいだなぁ、それも何年か前だったし」

「って、イルカショーが始まるけど、どうする?」

「冬だし、濡れると大変だけど行くかぁ」

「そこはお祈りってことで」

私達が昔見たときよりも演出などが追加されていて、感動した裏でなんだか寂しさを感じもしたけれど、非日常的な光景に二人ともイルカショーは大興奮だった。

「いや、凄かったな!」

「だねー、久しぶりにあんなに盛り上がったよ。それに濡れなかったし」

「ただなぁ、あそこまで盛り上がったら、なんなら濡れたかった気も......」

「流石に濡れたら、明日から風邪引くと思うよ」


日も暮れてそこそこの時間が経ち、親子連れの家族が帰り始める頃。

「もうそろそろ帰ろうか」

「俺はいいけど、いいのか?」

「もうイルミネーションも見たし、今日は倫也くん家で夕飯作るって言ったでしょ?あんまり遅くなるのもねー」

「そうだな」


「今日は飯作ってくれるんだろ、帰り寄るのはスーパーだけでいいか?」

「うーん、ケーキは買って帰ろうかな」

「よし、そうだな!ちょっとこの辺にいいケーキ屋がないか調べてみるな」

「倫也くんってケーキ好きだったもんね」

「いいだろ、別に」

「いやー、なんだか可愛いなぁって」

「駅の方にあるみたいだし、丁度帰り際に行けるな」

「混んでなければいいねー、あっでも今日はホールケーキは多いだろうけど、1切れのは大丈夫かな。」


「あっ、それ取って。」

「おう、そういえば今日泊まるなら色々大丈夫なのか?」

「えーと、色々って?」

「その、下着とか・・・・・・」

「黙って買うつもりだったのに」

「いや、なんかすまん」

「まあ、いいよ。倫也くんが気遣いの出来る男の子になったってことだし。それと、またジャージ借りてもいいかな?」

「お、おう」


「あー、美味かったー」

「それは、良かった」

「恵が泊まるのことが最近なかったから、久しぶりに手料理食べた気がする。」

「ゲーム製作始めたら毎週のように泊まるんだから、今は我慢しなきゃ」

「だよなぁ、あー早く来年になりたい」

「そういえば、どんなゲーム作るか決まってるの?」

「何となくだけど、考えてはいるよ。まあ出海ちゃんが受験だからどうなるかわからないけどな」

「流石に倫也くんと同じ目には合わせられないもんね」

「うっ」

「そこは何とかするしかないよね。出海ちゃんに推薦取ってもらうとか。」

「何にせよ、来年こそは作るぞ。何ってたって、あの二人に追いつかなきゃいけないんだから。」

「そうだね、それならまた私をメインヒロインにしてくれるのかな?」

「もちろんだ!その為には恵の協力が必要不可欠だからな!去年よりも、もっと萌えるゲームのしなければいけないけどな」

「協力はするけど、来年よりは恥ずかしくないのがいいかなぁ」

楽しそうにゲームのアイデアについて話す倫也くんを見ていると、来年から始まるお祭りに思いを馳せずにはいられなかった私であった。


「ねえ、倫也くん、今日楽しかったかな?また頑張れそう?」

「ん?もちろん楽しかったに決まってるだろ。今までで最高のクリスマスイブだったよ。それに、新作のアイデアも沸いたしな、何としても合格してゲーム作りを再開するぞ」

「そっかぁ、それなら良かった。」

楽しかった、その言葉を聞くとほっとしたり、嬉しかったりと色んな感情が溢れて来てなんだか楽しくなってにやついてしまう。

感情表現が適当だとか散々言われてきた私だけど、今日の私は彼の目にどんなふうに写ってきたんだろうか。

可愛いと思ってもらえたかな?愛おしいと思ってもらえたかな?メインヒロインにふさわしい女の子だって思ってもらえたかな?

それがわかるのはきっと、彼の創るシナリオの中でだけかもしれない。でも、いつの日かそれが読めるのだとしたら私はその日が待ち遠しくて仕方がない。




あとがき

※ここからは本編ではありません

いつもより長くなりましたが、ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。

やっぱり加藤(呼び方は加藤派なんです)は可愛いなと自分は再確認できたので、個人的には良かったです。

ただ、デートシーンがそろそろネタ切れなのがつらくなって来ました。元からストックなんてないんですがねー

主人公と会えないヒロインだって可愛い、というコンセプトはどこ行った?って感じでしたが、許してください。

次回からは多分英梨々かなと思います。

アイデアが出次第かく予定ですので、お時間あればそちらもお願いします。



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