最終話

 最後に彼女に会った日の夜に夢をみた。

 彼女が亡くなる夢を見てしまった。すぐに目が覚めてしまった。

 勢いよく起きて叫ぶ。

「すぎさきさん」

 すぐさま、着替えて部屋を飛び出す。

 ハアハアと息を切らしながら走る。

 辺りは真っ暗で街灯もないが月明かりだけを頼りに走った。

 すぐにいつもの桜の樹のしたについた。

 彼女がいるわけがなかった。

 今は夜中の3時。

 そんな深夜に一人でいるわけがない。

 いないとわかっていても行かないといけないと思った。

 ベンチに腰かけて頭を抱える。

 何であんな夢を見たんだろう。

 沙紀さんが亡くなる夢を見るなんて最悪だ。

 そのとき、救急車のサイレンが鳴り響いた。嫌な予感がした。

 沙紀さん......かな。

 夜が明け、太陽が昇り始めた。

 コンビニに行き夕食分まで買ってきた。

 ベンチで夜まで待ったが彼女は来なかった。

 翌日、起きて新聞紙を捲っていたら彼女が車に轢かれて亡くなったことが小さく書かれていただけだった。

 僕は杉前沙紀さんのことが好きだった。いや、今でも好きだ。

 いつまでも彼女のことを忘れないだろう。

 彼女との思い出は色褪せないだろう。

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桜の樹のしたで待つ想い 闇野ゆかい @kouyann

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