ああ、五月蠅い

 惨めに転がって何を叫ぶのか。

 惨めに蹲ったままで何を叫ぶのか。

 才能なんてないのに、言葉を紡ぐことさえ億劫で。

 才能なんてないと知って、心を曝け出すことが恐ろしくて。

 そのまま生きていたって何も無いのだと、溜め息を吐いた。

 そのまま走っていたって何も得られないのだと、甘言を吐いた。

 雑音が頭の中で木魂して、頭が割れてしまいそうだ。

 雑音は頭を掻き乱して、考えが砕けてしまいそうだ。

 ああ、五月蠅い。

 揃いも揃って、消えてしまえ。

 揃いも揃って、一欠けらも無く消え去ってしまえ。

 惨めな主張ばかり繰り返して、お粗末な脳味噌を披露した。

 惨めな言葉ばかり吐き出して、お粗末な脳味噌をぶちまけた。

 互いの真似をする合わせ鏡が、何を言ったって唯の木魂だ。

 互いを映し合う合わせ鏡が、何をしたって唯の影真似だ。

 そのままお綺麗に死んでしまえと、叫ぶ。それが唯一の救いだろう。

 そのまま惨たらしくに死んでしまえと、叫ぶ。それが唯一の助けだろう。

 ああ、五月蠅い。


 脳みそに響くから、口を閉じてそのまま消えてはくれないか。

 脳みそをぶちまけたくなるから、口を閉じてそのまま消え去ってはくれないか。

 ただの一欠けらも残さずに、どうか消えてはくれないか。

 ほんの一欠けらも遺さずに、どうか消え去ってはくれないか。

 これ以上、恥を晒すよりはましだろう。

 これ以上、愚かさを晒すよりはましだろう。

 ああ、五月蠅い。

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切れ端 九十九 @chimaira

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