第1話 まさかの同居生活!?

「ただいまー」


「お母さん、おかえりー」


夕飯の支度が終わると、ちょうどお母さんが仕事から帰って来た。


お母さんは突き当たりの部屋に行き、しばらくするとリビングに戻った。


「今日のご飯は久しぶりにカレーだよ」


「カレーかぁ。どうせまた、昨日の残りものでも入れてるんでしょ?」


「あ、バレた? だってもったいないじゃん」


お母さんが腰を下ろすと、あたしは手を合わせた。


「いただきまーす!」


「いただきます」


お母さんも、続けてそう言った。


一口食べると、美味しさが口に広がっていく。


「……ねぇ、花音」


「ん? 何ー?」


しばらく食べ続けていると、お母さんが話しかけた。


あたしは手を止めて、お母さんの方に顔を上げた。


「隣の家の櫂人くんの両親が、明日からしばらくの間、海外に転勤するのは知ってる?」


「知ってるよ。今日、学校で櫂人から聞いたから」


突然、櫂人の両親の話をしてどうしたんだろう? って思ったけど、あたしは答えた。


「なら話は早いわ。それで、櫂人くんを連れて行こうか、悩んでるみたいなの。日本ならまだしも、海外だとさすがに櫂人くんも不安だろうし、だけど櫂人くんを一人残して行くのも不安だからって。それで私、提案してみたの」


「提案って?」


あたしが訊くと、お母さんがそこで一拍おいて、話を続けた。


「櫂人くんを、家で預かってみないって」


「……えっ。えええええ!!?」


驚いて大声を出すと、思わず立ち上がってしまい、お母さんもさすがに目を見張った。


「それって、櫂人も一緒に住むってこと!?」


「ずっとじゃないわよ。櫂人くんの両親はたぶん1年くらいって言ってたし」


「1年も!?」


1年も櫂人と一緒とか、最悪すぎる……。


「二階に、空いてる部屋が一つあるでしょ? そこを櫂人くんの部屋にしたいんだけど、花音はそれでいい?」


「それは別にいいけど……」


その部屋は、元は死んじゃったお父さんの仕事部屋だった。


赤の他人だったら、本当は使わせたくないけど、櫂人なら別にいいかな。


「よかった! 荷物は櫂人くんが学校から帰った時に部屋に持って行くみたいだから、部屋まで案内をよろしくね」


「うん、わかった」


「話は以上よ。じゃ、気を取り直して早く食べましょ」


さっきまでの仕事の疲れが一気に吹っ飛んだみたいに、お母さんは一気に食べ始めた。


対するあたしは、逆に食べる気が少し失せてしまった。


お母さんってば、相談なしに勝手に決めないでよね。


夕飯を食べ終わると、歯磨きをしてお風呂に入って。


後に、櫂人が来ても大丈夫なように、軽く空いてる部屋の掃除をした。


たぶん1年くらいってことは、もしかして1年以上櫂人と暮らすかもしれないって事だよね。


それにお母さん、仕事で夜遅くに帰って来る事だってよくあるし、ほとんど櫂人と二人だけになるよね。


はぁ~……。


よりにもよって、何であたしん家なのー……!

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大嫌いなあいつと同居生活 なのはな @pad

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