10月31日 午前11時20分 きんせつレジャーランド控え室
「佐藤さんこの後は?カノジョと遊ぶの?」
「何だよそれ。いないって」
ジェネラルイエローを担当するアルバイトがからかうように佐藤に話しかける。制服に着替えた佐藤とは違って私服の彼女は浮ついた表情だ。噂のカレシとデートだろうと予想をつけた。
「いいじゃないですかあ。あ、佐藤さん連絡先聞いていいですか?あたし、佐藤さんだけ知らないんですよぉ」
「あんたみたいな若い子に教えられるようなもんないって。それと見りゃ分かんだろ。午後はキャストだよ」
けたけた笑う彼女を横目に佐藤は眼鏡を拭く。長めの前髪と伏し目が相まって素顔は見えない。興味深そうに佐藤の顔を覗き見る。
「佐藤さん」
「何だよ」
「カノジョできたことないでしょ」
急にどうした。佐藤が言い返す前に千絵はドアを出て行った。バイトは気楽なものだと呆れると、鞄の中から小さな弁当箱を取り出す。28歳、彼女無し。すっかり上達した料理が彩りカラフルに並べられていた。
「あのくらいならコーヒーカップかゴーカートか」
独り言は誰にも聞こえない。
幼い駆けない離さない @tototaroh
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