第13話

(ふぅ……、二人殺ったのに数が増えてるってどういうことだ……。殺れば殺るだけ標的ターゲットが増える特別仕様か?)



 思わず心の中で悪態をつくしかできなかった。

 しかし、そうもいっていられない。

 国王が現れるまでになるべく数を減らしておくしかない。


 どこまで数が増えるのかわからない暗殺者に対してカイはため息を吐きながら更に次の相手を探しに行く。


 ただ、わざわざ探す必要すらないレベルでそこら中に暗殺者がいた。

 よほどこの国の国王は恨みを買っているようだ。



「まぁ、それは俺には関係ないことだな」



 依頼を受けた以上、それを果たす。

 カイがすることはそれだけだった。



(ナイフ……、足りるかな?)



 一応カイの……正体不明アンノウンの暗殺だとわかるようにいつも胸に挿したナイフは残すようにしていた。

 でも、これだけ数が多いとナイフが足りなさそうだ。



(そうだな……。今回は国王の護衛……ということだもんな。それ用の名前があるか。あの名前を使うなら後から広める必要があるが、まぁプラークに頼めば良いか)



 まぁ嫌がるだろうけどな……と、カイは苦笑を浮かべていた。

 とりあえず、あの名前……、暗殺者ランク八、騎士の名前を使うには装備を調える必要があるな。

 ナイフじゃなくて剣を……。まぁ準備はしてあるから……。


 腰に改めて剣を携えるとカイは暗殺者を狙っていく。



 ◇

(暗殺者)



「おい、本当にこんな依頼を受けて良かったのか?」

「仕方ないだろう。破格の報酬だったんだから……」

「それでも、国王暗殺なんて……」

「バカ! 声がでかすぎるぞ!」



 暗殺者の一人が声を大にして答える。

 すると周りの人たちが一瞬騒ぎ出す。


 ただ、騒動は直ぐに収まっていた。



「ふぅ……、今日がいつもの暗殺じゃなくてよかったな……」

「それよりも本当に良かったのか? 相手が国王ともなると向こうも護衛の他に暗殺者とかも雇ってるだろう?」

「噂ではランク一位を雇ったとか聞いたな。あとは他にも高ランクを何人か……」

「姿がわからないランク一位は警戒のしようがないからな。それよりも俺はランク八位が出てくるんじゃないかと思って怖いんだが?」

「騎士か……。たしか国の代表からの依頼ばかり受けるやつだったな。依頼数は少ないもののその実力は折り紙つきで急所を的確に突く剣さばき、確実な仕事、常に相手の正面から向き合って殺すスタイルからついた名前だな」

「あ、あぁ……、今回もそのクラスが出てくるんだろう……。ナンバーズクラスが……」

「そこは考えても仕方ないな。とっとと標的を殺ってしまって、逃げるに限る。――だろう?」

「それもそうだな……ぐふっ。だ、だれだ、てめぇ……」



 男の胸には鋭い銀の剣が突き刺さっていた。

 そのまま意識がもうろうとなる男。



「……やはり使い慣れてない武器だと微妙に位置がずれてしまうな」



 カイが剣を抜くと男はそのまま血を吐いてその場に倒れる。

 すると周りで悲鳴が聞こえ、周囲の人が慌てふためいていた。



「お、お前は……騎士か?」



 生き残ったもう一人の男が尋ねる。

 しかし、カイは何も答えることなくその場を去って行った。





「うーん、やっぱりこれは目立ってしまうな……」



 剣を拭い終えた後、先ほど仕留め損ねたもう一人を探ってみる。

 ただ、仲間を殺されたことでおそれをなしたのか逃げていったようだ。


 時間もないことだし、全員を殺さずに適度に脅しつつ行く方がよさそうだな。



「全く、面倒な仕事だ……」



 カイがため息を吐いているとちょうど王城の方から高らかに笛を鳴らす音が聞こえる。



「ちっ、狙われていることを知っててなんでわざと目立つようなことをするんだ!」



 悪態をつきながらも急いで王城へと駆けていく。





 王城付近ではすでに国王に対して魔法の攻撃が行われていた。


 町中でここまで派手な攻撃をしてどうするんだ!

 もし殺すことができたとしてもあとは騎士達に殺されて終わりだ。


 自分が死んでもいい……なんて言うのは暗殺者じゃなくて、ただの自殺志願者だ。

 生き残ってなんぼの仕事だろう……。


 それもわからないやつか……。と思わずため息も吐きたくなる。


 最近はランキングなんてできたせいで暗殺者の数が増えすぎてダメだ。どうせ直ぐに死んでいくのに……。



「とりあえずアルマの結界がある以上、国王は大丈夫だ。あとは、攻撃を防がれても逃げていかないやつだけを狙えば――」

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