第12話
「それで私は何をしたらいいの? さすがに暗殺はほとんど経験したことないわよ?」
「さすがにアルマにそんなこと頼まないよ。暗殺は俺がする。ただ、国王の視察になると人が集まるだろう? さすがに人が多すぎると移動しにくい」
「わかったわ。私の魔法で姿を消すのと貴方の周りの人が意図的に避けてくれるようにしたら良いのね」
「あぁ、あとは国王に防御魔法も頼む」
「要望が多いわね……。割増料金で良いかしら?」
「どうせ俺が払うんじゃないからな。色々つけておくと良いんじゃないか?」
「わかったわ。魔法一回につき、追加で値段を乗せていくわ」
嬉しそうに微笑むアルマ。
相変わらずの彼女の様子にカイは苦笑を浮かべていた。
「それでどういう手はずかしら?」
「まずはプラークの店に一度集まることになってるな。一緒に来てくれるか?」
「行きたくないと言っても行かないといけないのでしょう? それなら面倒事は早く済ませたいわ」
「わかったよ。それじゃあ早速行くか」
◇
アルマを連れてプラークの店へと戻ってくる。
するとプラークは鎧を着込んで、手には大斧を持って、準備万端の様子だった。
「……どこの魔物と戦いに行くつもりだ?」
さすがに町中でする装備ではないのでカイはあきれ顔を浮かべていた。
「むしろそっちが俺の仕事だろう? 細々としたものを期待するな」
「それもそうだな。後がなくなったら魔物を放ってくるかもしれないからな。そのときは頼むぞ」
「あぁ、任せろ」
腕の筋肉を見せてくるプラーク。
(とりあえず最悪の状況はこれで防げるか。あとは俺がどれだけ早く暗殺者達を殺ることができるか……)
「まずは国王が視察を始めるのを待つだけだな……」
「人もたくさん集まってきたな」
プラークが呟いてくる。
「そうだな。とりあえず俺は行動を始めるよ。アルマ、魔法を頼んでも良いか?」
「もちろん!」
アルマが指を鳴らすと体が少し軽くなった気がする。
いつもなら魔法による強化はそれだけで場所を察知される可能性があるから使わないのだが、こと今回に限っては人が多すぎて察知するにまで至らない。
それなら使えるものは使っておくべきだろう。
「それじゃあ少し出てくるな。プラークとアルマは手はず通りに頼む」
「任せろ!」
「……お金の分は頑張るわよ」
頼りになるかどうか、微妙な返事を聞いたあとカイは店の外へと出てくる。
◇
(暗殺者なら自分の殺りやすい位置取りをしているはずだ。つまり、人混みが予想される今だと既に準備しているやつが暗殺者の可能性が高い。一般人も来ているから確実とまでは言い切れないが……)
周りを見てみるとやはりたくさんの人が集まっており、ぱっと見ただけではどれが暗殺者かはわからないのだが、カイにはおおよその判断がついていた。
(
まず確実に暗殺者とわかる二人から狙っていく。
二人は幸い近い位置にいる。
「よし……」
カイは早速人混みに紛れてその二人へと近付いていく。
◇
(暗殺者)
「ふぅ……、良いところを取ることができたが、良くない情報もあるな。国王が身を守るために護衛を雇ったとか……」
「でも、護衛程度なら俺たちの敵じゃないだろう? 暗殺者ランク二桁……。このレベルはさすがに直ぐに準備できないだろうからな」
「そうだな。王国戦士長ですら俺たちの敵じゃないもんな」
「もちろんだ」
男達は微笑みあっていた。
ただ、その笑顔のまま男の一人は倒れていく。
その心臓には一本のナイフが刺さっていた。
「い、一体誰が!? ぐっ……」
周りを探り出した瞬間に男の胸にも同じようにナイフが刺さり、そのまま倒れていく。
「い、一体誰が……。俺たちの気配察知は完璧だったはず……」
ナイフを差した相手を必至に探す。
するとそのときに俺たちの胸に刺さっているナイフと同じものを持った少年を発見する。
ただ、彼からは一切暗殺者らしき気配を感じなかった。
それを他の相手に伝えようとするが、そのまま男は意識を失っていった――。
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